この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
これまで有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
●お問い合わせは無料です。ページ下部のメールフォームよりお気軽にご相談下さい。
毎月の無料相談会でも、せどりやアフィリエイト、物販などのネットビジネスをされている方の他、プログラマーやデザイナーさんなど、IT関係の税務調査について、フリーランス(個人事業主)の方や経営者さんからも、よくご相談を受けるのですが、
中には実際に調査に入られてから、最初は自力で対処をしていたり、既存の税理士さんにお任せしていたところ、調査官から言われた額を見た結果、金額に驚いて
「なんとかして下さい……、助けて下さい!」
と、弊社に電話をかけて来られる方もおられます。
税理士試験は国家資格ですので、誰に頼んでもスキルに大差はないと思われがちですが、実際のところ、節税や税務調査対策というのは試験に出るものではありませんので、それぞれの税理士が日頃からどれだけ研究し、実践しているかで雲泥の差が出てくる部分でもあります。
例えば、既存の税理士さんにお願いしていたところ、税務署から数千万円の追徴課税の指摘を受けたものが、その後に弊社が対応した結果、60万円の追徴で済んだというケースも実際にあります
(※ちなみに数百万の差はザラにありますが、調査が入ってから税理士が変わることは、税務署側に「怪しいな…」と疑念を与える可能性がありますので、現在、調査中のご依頼は基本的にはお受けしておりません)。
調査官もプロですし、彼らは出世のためには、あの手この手を使って1円でも多く徴収して帰ろうとしますので、生半可な対処法ではとても太刀打ち出来ません。
ただ、税務調査の流れやその対処法を予め知っておくことで、個人で対応される場合でも、事前に追徴を少なく留めることが可能になってきますので、今回はそんなITやネットビジネスの税務調査と対処法について、詳しく解説していきましょう。
IT関係やネットビジネスの税務調査の特徴は?
せどりやアフィリエイトなどのネットビジネスや、パソコンを使ってお仕事をされているIT関係の税務調査の場合、一般のそれとは違った「独特な調査ポイント」というのがあります。
まずはそれについて解説していきます。
専門の調査官が同行してくる
まず、ITのお仕事をされれいる方の税務調査で一番特徴的なのは、調査官の他に「情報技術専門官」という、IT関係やネット上での取引について、専門的な研修を受けた調査官が、よく同行してくることでしょう。
最近では刑事もののドラマ等でも、サイバー犯罪対策課の捜査官などが出てくることがありますが、税務署にもITやネットビジネスに長けた専門家がおり、事前に様々な情報を調べた上でやって来るのです。
よくあるケースとしては、有名なところだと、Amazonや楽天、Yahoo!やGoogleなどの他、PayPalやインフォトップ、A8ネットなど、各会社によって異なる締め日と入金日のズレから、申告が間違っているところを突いてきたりするので、税務調査の時に
「○月分の××からのASP報酬が間違っていて〜〜〜」
と言われても、それらに詳しくない税理士さんの場合、「???」となるのか、
「近くの税理士さんに相談に行ったんですが、ネットビジネスの申告は断られました……」
と、弊社に来られる方も多くおられます。
ただ逆に言えば、情報技術専門官というのは、そんなに何人もいるわけではありませんし、指摘してくる流れも大体共通していますので、弊社からすると、やり方を分かってしまえば逆に対策を講じやすかったりするのです。
オンライン上のやり取りは見張られている!
また国税局では「電子商取引監視チーム」というのを配置し、ネット上での取引を見張っています。
ネット上でビジネスを行った場合、銀行口座も含めて基本的にオンライン上に取引の記録が全て残っていますので、税務調査の際には、調査官に1円単位で売上を把握されていることも珍しくありません。
また弊社が独自に入手した内部情報でも、税務署は今、ネットビジネスの調査に非常に力をいれていますが、そのことが窺える記事が日経新聞にも載っていましたので紹介しましょう。
『脱税、ITデータも調査 強制収集へ法改正検討』
財務省と国税庁は脱税調査に際し、クラウドなどのインターネット上に保存されているメールなどの情報を強制的に押収できる権限を認める検討に入った。国税犯則取締法を68年ぶりに改正し、2017年にも実施する。(出処:日経新聞より)
というのが主な内容です。
国税犯則取締法の改正については、国税局が行う査察に関する話ですので、税務署が行う一般的な税務調査とはまた違った話になりますが、ITデータに対して、これだけの働きかけをしてくることや、上記の情報技術専門官や、電子商取引監視チームを配置したりと、ネットビジネスを展開している皆さんを狙っていることは、このことからもお分かり頂けるかと思います。
税務調査は個人にも入られる?
これも相談会などでよく聞かれることですが、税務調査は法人にしか入らないと思われている方もおられるようですけれど、そんなことは全くありません。
詳しい数字は後でご紹介しますが、青色申告、白色申告に関わらず、個人事業主ももちろん対象となります。
損益通算をしている個人事業主は特に注意が必要!
傾向としては、損益通算をしている方は特に狙われやすくなります。
というのも、損益通算の規定は難しく、間違った処理をされていることが多いため、税務署もそこを狙って指摘してくるわけです。
具体例を一つあげると、よくインターネット上で、個人事業でたくさんの経費を計上して赤字を作り、給料の源泉税を返してもらうような手法を目にすることがありますが、ずっと赤字を繰り返している事業が果たして本当に「事業」と言えるのかというリスクが出てきます。
仮に所得税法上の事業とは判断できず、その所得が事業所得ではなく雑所得とされた場合、雑所得のマイナスは給与所得と損益通算することはできません。
またその適用が間違っていたとしてもすぐに調査に発展せず、3年程度経過してから調査に発展するケースが非常に多くあります(要は泳がされている状態ですね)。
つまり「自分は調査に入られていないから大丈夫」というのは間違いで、単に泳がされているだけということも大いにあり得るのです。
ちなみに法人の場合は、そもそも損益通算という概念がありませんので、それを狙って税務調査ということはありません。
個人事業主は事業と生活をなるべく明確に分けることがポイント
例えば個人の場合、自宅でもお仕事をされていて、その家賃を按分して必要経費に計上されている方もおられるかと思いますが、居住部分との区別が明確でないなどの理由で、計上していた家賃が、税務調査で否認され、裁判で争いましたが納税者が敗訴したという事例があります(東京地裁 平成25年10月17日判決)。
これは対処法とも通じるところですが、要するに個人事業の場合は、いかにお金の流れを生活用としっかり区別しておけるかが重要になってきます。
例えば、通帳はきちんと事業専用の通帳にしておかないと、他の生活用の口座の方までチェックされ、調査官に余計な突っ込みどころを与えてしまうということもあり得ます。
ちなみに、法人の場合は基本的に社長個人の生活用通帳を見せる必要はありません。
税務調査の対象とは?
ここまで、個人の税務調査について先に書いてきましたが、次に税務調査に入られる確率について見ていきましょう。
総務省統計局の「平成26年経済センサス‐基礎調査」によると、そもそも日本の法人の数は2008568社(1750071+258497)で約200万社、個人経営の人数は2089716人なので、約209万人ですが、その内、実地調査件数は、国税庁のホームページを見てみると平成26年度で、
- 法人……95,000件
- 個人……67,774件
となっています。
《関連リンク》
国税庁HP「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要 」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/hojin_chosa/index.htm
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/hojin_chosa/pdf/hojin_chosa.pdf
国税庁HP「平成26事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/shotoku_shohi/
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/shotoku_shohi/sanko01.htm
つまり、
- 法人の実地調査件数95,000件を法人の数2008568社で割ると4.73%
- 個人の実地調査件数67,774件を個人の人数2089716人で割ると3.24%
ですので、法人は20社に1社、個人は30人に1人ほどが調査に入られている計算になります。
これだけみると、税務調査に入られるのは、よほど運の悪い会社(人)のように感じられるかも知れませんが、これは平均値なので、実際には税務調査に入られやすい会社(人)というものが存在します。
逆に言うと、そこを分かって事前に対策しておくことで、税務調査に入られる確率をより低くすることが可能だというわけです。では、税務調査に入られやすい会社や個人というのはどんなところなのでしょうか?
税務調査に入られやすい対象と対策法は?
税務調査をどこの会社に行うかの選定の際に基準としては、
- 決算書の各科目の数字が前年と大きく変わっている会社
- 税務署が把握しているデータ等からみて問題がありそうな会社
- 以前の調査で重加算税がかけられた会社
- 前回の調査から何年経過しているか(長期未接触を含む)
などがあげられます。
そして、これらの基準をもとに、まずはKSKというコンピューターが選定し、そこからさらに人(統括官等)によって絞り込まれます。
ということは、税務調査に入られにくくするためには、上記の基準を元に、コンピューターに選定されにくくなる処理の方法を行い、コンピューターに選定されたとしても人によって絞り込まれにくくする資料を作成しておけるかどうかが重要になります。
弊社のクライアント様の場合は、日頃からしっかりと対策を講じさせて頂いていますので、実際に税務調査に入られる確率は上記の半分以下になっていますが、そこまででなくても、ご自身でも出来る対処法を次にご紹介しておきましょう。
決算書の各科目の数字が前年と大きく変わっている会社の対策法
まず1の「決算書の各科目の数字が前年と大きく変わっている会社」の場合、数字が変わっている理由を記述したものや、根拠資料を申告書に添付するのが効果的な方法です。
ほとんどの税理士は、申告の際に申告書しか提出しませんが、そんな決まりはどこにもありませんので(笑)、弊社では申告書以外に資料をよく添付します。それだけでも税務調査に入られる可能性をグッと下げることが可能です。
税務署が把握しているデータ等からみて問題がありそうな会社の対策法
次に2の「税務署が把握しているデータ等からみて問題がありそうな会社」についてですが、一般的に税務調査では、その会社の調査のみならず、その会社と取引のある会社の数字をチェックして帰っていきます。これを資料箋(税務署側)といいます。
また年に何度か税務署から、会社が税務署に提出する資料箋が送られてきますが、それとを見比べて、数字が違えば、それを根拠に税務調査に来るというわけです。
これに対する対応策としては、会社が税務署に提出する資料箋については提出を控えるのも良いでしょう。
そのことを知らない税理士も多く、返送しがちですが、資料箋は行政指導ですので返送しなくても、行政指導に従わなかったことを理由として不利益な扱いをしてはならないことは、行政手続法第32条第2項にも定められています。
その事から弊社では、お客様から預かった資料箋は、お客様に理由を説明して提出を控えるケースもありますが、これについて税務署から何か言われたことは一度もありません。
以前の調査で重加算税がかけられた会社の対策法
そして3つ目の「以前の調査で重加算税がかけられた会社」ですけども、税務調査で重加算税(最も重い追加課税)が課税されると、税務署内の分類で第三分類というものに分類されます。
第三分類になるとKSKに必ず3年に1回税務調査の候補に選定されてしまいます。
税務署の発表では重加算税の割合が20%となっていますが、この重加算税というのは本来、仮装・隠蔽が要件です。
つまりこのデータが正しいとするなら、申告上のミスではなく、5件に1件の割合で、意図的に仮装や隠蔽が行われていることになりますが、普通に考えても明らかに多すぎる数字でしょう。
実はこれには理由があり、結論からお伝えすると、仮装や隠蔽が行われていなくても、税務調査官は重加算税をかけようとしてきます。
私が立ち会った調査でも、仮装隠蔽ではないのに重加算税といわれたことが結構ありますが、法律上の要件を把握していなかったり、税務署との交渉がちゃんと出来ない税理士も多く、そのまま言いなりになってしまっているので、20%という数字になっているのです。
ウソのような話ですが、それが現実です。
これらは税務署が強引に徴収しようとしてくるケースのホンの一例ですが、対処法としては、きちんと法的根拠を踏まえた上で、反論や交渉が出来る税理士に依頼をするしか実のところありません。
ただ万が一、どうしてもご自身で対応せざるを得ない場合は、どこが仮装隠蔽に当たるのかを具体的に聞き返して下さい。
もし仮装や隠蔽がみられないのに言ってきているのであれば、重加算税の要件に当たらないため課税されません。
前回の調査から長期間経過している場合の対処法
最後に「前回の調査から何年経過しているか」ですが、長期未接触の場合の税務調査というのは、何か否認根拠があってくるわけではなく、長期間入っていなかったという理由で来るものですので、対応方法は特にありません(必要ありません)。
なので税務調査官も、追徴税額が取れる可能性が低いと思っているのでヤル気が無いことも多く、簡単な調査になることが多くあります。
つまらない否認指摘を受けてしまわないよう、顧問の税理士に元帳をチェックして貰いましょう。
税務調査に入られやすい時期は?
これもよく聞かれることですが、個人の場合は、春より秋の方が税務調査が多くあります。
理由は単純で、春は個人の確定申告があるので、税務署内での仕事が非常に多く、税務調査に回せる時間が少ないので、秋に税務調査が多くなるのです。
ちなみに法人部門の税務調査官も、税務署の下期(1~6月)、特に2~3月は、個人の確定申告の応援に駆り出されることがありますし、確定申告の時期は税理士も多忙ですので、税理士会との申し合わせにより、できるだけこの期間は税務調査に行かないように取り決めているなどの理由から、上期(7~12月)に比べると税務調査は少ないと言えます。
通常、税務署内の情報というのは、税理士や会計士のところに入ってくるものではありませんが、節税対策や税務調査対策の観点から、弊社では独自ルートで日常的に入手しており、例えば税務調査官には、1年間の調査件数にノルマがありますが(よく勘違いされるのですが、「税額」のノルマではなく、あるのは「件数」のノルマです)、そのノルマも上記の理由から、7~12月は、1~6月の約2倍という話もあります。
税務調査の期間や流れ
事前に知っておくことで、もしもの時にも対処しやすいかと思いますので、次に実際の税務調査の流れについてご紹介しましょう。
一般的な税務調査の流れは以下のようになります。
税務署から税理士に電話で事前通知
一般の税務調査の場合は事前に連絡が来るのですが、個人事業主などで顧問税理士がいない場合は、会社やその方に直接連絡が来ます。
日程を調整する
よく勘違いされている方がおられますが、調査日は、必ずしも税務署の指定した日でなくても構いません。
仕事の都合等もあるかと思いますので、税理士と相談して調査の日を変更してもらいましょう。
税理士と打ち合わせを行う
調査で「必要な資料」や「必ず聞かれること」などを予め税理士と打ち合わせします。
これをされない税理士さんも結構おられるようですが、税務調査対策に長けている税理士の場合、「必ず聞かれること」などはもちろん把握しているものですので、前もって話す内容を準備しておくことで、当日落ち着いて調査にのぞむことが出来ます。
税務調査当日のスケジュール
通常、税務調査官はAM10:00頃にやってきてPM4:00頃に帰ります。
始めの1時間は上記で打ち合わせしていたような事柄の質問の受け答えをし、11:00頃から帳簿のチェックに入ります。
この昼休憩までの1時間にチェックする帳簿はほぼ決まっているのですが、実はこの2時間がとても重要になってきます。
この2時間の間に、調査官がこの会社は問題が多いと感じると、その後の調査が厳しくなるわけですが、通常、実地調査は2日ほどで終了します。
調査最終日のPM4:00頃、問題が無ければ調査は終了になります。
指摘事項がある場合は、顧問税理士に伝えて調査官は税務署に帰ります。
その後、税理士は指摘事項を検討し、クライアントと相談の上、税務署側と折衝を行いますが、ここが税理士の腕の見せ所で、税理士の経験や能力で、その後の結果が大きく変わってきます。
修正申告書を提出する
指摘事項を検討し納得すれば、修正申告書を提出して本税や加算税を支払います。
納税が一括で出来ない場合は、徴収部門(調査官とは違う担当者)の職員と相談することで、分割に出来ることもあります。
国税の不服申立制度
指摘事項に納得がいかない場合は、修正申告を行いません。
その場合は、税務署は「更正」通知を送ってくることになります。
更正処分の内容に納得がいかない場合、処分を行った税務署長等に対する「再調査の請求」や国税不服審判所に対する「審査請求」を行うことになります。
その後、再調査の請求についての決定や、国税不服審判所の裁判に納得できないときは裁判で争うことになります。
注意すべきこととしては、国税不服審判所の審査を受けないと裁判には進めません。
税務調査当日のポイント
具体的な対処法については以下にご紹介しますが、まず、調査を受けるときは感情的にならないことが非常に重要です。
むこうの作戦なのかも知れませんが、中には行き過ぎた調査を行う税務調査官もおり、そういう時に適切に対応するのも税理士の役目です。
そして、基本的な対処法としては「質問されたことだけを答える」これを心掛けて下さい。
中には緊張されていたり、恐がっておられるのか、聞かれていないことまでつい話される方がよくおられますが、マイナスに働くことはあっても、プラスになることはまずありません。
また、一般の方には同じ内容だと思われるようなことでも、言い方によって違う解釈になる場合があります。
こういうときは税理士が話に割り込んで説明を加えることがあります。
そんなときは口を挟まず税理士に任せることも重要です
(もちろんその税理士が税務調査のことを熟知している前提ですが……)。
ちなみに、税務調査官はそれとなく、納税者の趣味や交友関係を聞いてきたりしますが、それは単に世間話をしているのではなく、「全て調査のため」だということを予め知っておいて下さい。
税務調査の終り方は?
税務調査の終わり方には、大きく分けて3つのケースがあります。
- 申告是認……申告に誤りがないということでこれで終了です。現在では、是認通知が送られくることが多くあります。
- 修正申告……会社が誤りを認めたときは修正申告を提出し納税します。
- 更正通知……納得いかない場合は修正申告をせずに、税務署からの更正通知が届きます。その後、更正に不満がある場合は不服申し立てを行います。期限が過ぎると不服の申し立ては出来なくなりますのでご注意ください。
ここでポイントとして、不満がある場合でも、一旦追徴税額を納付してから戦う方が得策です。
裁判で敗訴したとしても、その後の延滞税がかかりませんし、勝訴したときには利息(加算金)が付いて還付されます。
税務調査を受ける場所について
税務調査を受ける場所は、法律上明確な規定がありません。
帳簿類を調査官が確認する必要があることから、一般的には帳簿を保管している場所で調査を受けることが多くなります。
調査を受ける場所が無い場合や、ビジネスによってはお客様に税務調査を見られたくないといった場合は、場所を変更してもらうことは可能ですので、言いなりになる必要はありません。
税務調査時の具体的な対処法とは?
税務調査でよくあるケースについて、どのように対応すべきか、正しいやり方をご紹介します。
コピーを頼まれた時には?
税務調査の際、調査官から書類のコピーを頼まれることがあります。
この場合は同じものを必ず2部コピーします。1部を調査官に渡し、もう1部はあなたが保管してください。
調査官が何を持ち帰ったか把握しておくことで、その後の対応がしやすくなります。
帳簿の持ち帰りを要求されたら?
調査官から帳簿の持ち帰りを要求されることがあります。
ただ知らないと、そのまま言いなりになってしまいがちですが、必ず持ち帰りを容認しないといけないわけではありません。
もちろん、むやみに断ればいいというものでもありませんので、税理士と相談し、メリットとデメリットを良く考えた上で判断して下さい。
税務調査では言ってはいけない言葉がある!
本人はそんな気はないのでしょうが、実は税務調査では言ってはいけない言葉、言うと逆効果になるフレーズというのがあります。
その代表的なものが「前回の調査では指摘を受けなかった」という言葉です。
これを言いたい気持ちはよく分かりますが、「指摘を受けなかった」=「その事柄が認められた」ということではありません。実際には前回の調査官が気づいていなかっただけということが多いのです。
税金は最高7年まで遡ることが可能ですので、その言葉を言ってしまったばかりに「間違っているものは否認します」と、過去の分まで税金を払わされることになりかねません。なのでうっかり言わないように注意してください。
税務調査官にパソコンに触らせてはいけない!
IT関係やネットビジネスの税務調査の場合、パソコンの中のデータを調べられることも多くありますが、もし触らせて欲しいと言ってきた場合は決して直接触らせず、
「見たいデータは表示させますのでおっしゃって下さい」や
「必要なデータはプリントアウトしますので」
と答えてください。過去には調査官にパソコンを触らせた結果、データがグチャグチャにされたり、復元ソフトを勝手に入れられたというケースもあります。
何もやましいところはないので、復元されても構わないとおっしゃる方もおられるでしょうが、これもマイナスにはたらくことはあっても、プラスになることは基本的にありませんので、もしそれでも理由をつけて触ろうとしてきた場合は、
「税務調査は任意なので、会社や個人の許可なく物品に触れる事は出来ないですよね」
と主張してください。
税務調査に社長が立ち会う必要は?
世の中には、忙しくてなかなかスケジュール調整が出来ない社長や事業主さんも多いことでしょう。
なので、わざわざ時間を割いて税務調査に立ち会わないといけないのかどうかについてですが、実は顧問税理士がいれば、社長が税務調査に同席しないといけない決まりはありません。
「すべて税理士に任せているので、税理士に質問をしてください。
私でないとわからないことは、税理士に言ってもらえば、後ほど税理士経由で回答します」
と言えば、税理士だけで対応することが可能です。
但しその場合、先ほども税務調査に入られる前の準備が大切だとお伝えしましたが、それらのことを考えても、税理士というのは本来、ただ税金の計算をするのが仕事ではなく、税務署への反論や交渉がちゃんと出来るかどうかが重要になってきます。
そのことからも信頼のおける、税務調査を熟知した税理士に任せることが重要になってきます。
突然、税務署がやってきた場合(無予告調査)の対処法は?
先ほどもお伝えしましたが、税務調査は通常、調査官が事前に会社や税理士に連絡を入れて日程調整を行った上でやって来ます。
しかし事前通知無く、いきなり調査官が会社にやってくることがあります。これを「無予告調査」といいます。
国税庁の発表では、法人の約10%、個人事業主の約20%で無予告調査が行われていますが、これが結構やっかいで、この時の対応方法を知らないと、いきなり税務調査が始まってしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
では、無予告調査の正しい対応方法はどうすればいいでしょう?
調査官がいきなり来ても会社に入れてはいけない!
まず、突然来られても、税務調査の準備はもちろん、仕事の調整も出来ていないわけですから、困られる方がほとんどでしょう。
なので、またにして欲しいと思うのが普通だと思うのですが、税務署側としてみれば、抜き打ちで入りたいわけです。
そんな時、調査官が使う常套手段として、玄関先で「入っていいですか?」と聞いてきます。
これは、「立ち話もなんなので、とりあえず中に入っても良いですか?」のように一見聞こえるため、社長のみならず、対応した社員でもつい「どうぞ」と言ってしまいがちですが、これは実は「税務調査に入っても良いですか?」という意味で、許可をすると税務調査が始まってしまいます!
税務調査官は、社員等が「どうぞ」と言わない限り調査に入れないことを法律上知っているので、そうやってカマをかけてくるのです。
なので社長はもちろん、受付の方など、対応する可能性のある社員さんには、その事をちゃんと伝えておきましょう。
税理士に電話をする
そうやって、「入って良いですか?」と聞かれた時には、「少しお待ち下さい」とだけ言って、会社の外で待たせたまま、すぐに税理士に連絡してください。
いきなり来ているのですから、遠慮する必要はありません。
税務調査の日程を決める
待たせる時の注意点としては、決して「調査は受けられません」と言ってしまってはいけません。
だからと言ってその日に調査を受ける必要はもちろんありませんので、正しい対処法としては、こちらから別の日程を決めてしまうことです。
なので、「今日は予定があるので別の日にしてください。来週の○日だったら構いませんよ」と、具体的な日程をこちらから決めてしまいましょう。
単に「調査は受けられません」と言っても、向こうも仕事ですのですんなり引き下がりませんが、日程さえ決まれば、調査官が今すぐ税務調査をしなければならない理由はなくなるので帰っていきます。
税理士に電話で連絡がついた場合は、(そのことを理解している税理士であれば)代わりに交渉してもらうのも良いでしょう。
他にもある?無茶な税務調査とは
税務調査というのは正義のために、法律に則って行われているものと思われがちですが、先ほども申しました通り、調査官はその成績で出世が決まってくるので、実際の現場においては、相手が無知な素人や、よく分かっていない税理士だと分かれば、法律にないことでもさも正しいことのように言ってきて、強引に徴収しようとしてきます。
これらは本来、あってはいけないことですので、そんな口車に乗せられないよう、対処法をご紹介しておきます。
税務署員が自分のお客様のところに行くことがある
場合によっては、税務調査官があなたのお客様のところに出向いていったり、電話等であなたやあなたの会社のことを色々と調べることがあります。
ただ、逆にあなたのところへ得意先のことを聞きに、税務調査官が突然来たらどう感じられるでしょう?
「もしかしてあの会社、何かヤバイことをしてるの……?」
と、印象が悪くなったりしないでしょうか。
それだけで済めばまだ良いのですが、過去には銀行にそれをされたことが原因で、取引がストップしてしまった事例も実際にあります(そんなことで会社が倒産してしまっては元も子もありません……)。
このように税務署の調査官が、自分の取引先や銀行などに電話をしたり、出向いて帳簿などを調べることを「反面調査」といいます。
反面調査は法的に認められてはいますが、上記のように、税務調査の対象者に事業上の影響があるということで、国税庁では内部通達を出して「やむを得ないと認められる場合に限って行うこと」と規定しています。
しかし、その内部通達をよく把握していない調査官がいるのも事実です。
なので税務調査でも、強引に徴収しようと反面調査に行くことがありますが、調査官が意味もなく、反面調査に行くといった場合は、国税局の内部通達を知った上で言っているのかどうか、調査員に確認してください。
不要な反面調査を回避することが可能です。
証拠を示せと言われた時の対処法は?
よく税務調査の時に反論をすると
「それなら証拠を出して下さい。出せないのであれば否認します」
と言われることがあります。
先ほどの、本来の要件から外れていても重加算税を課せられている件とも重なりますが、そう言われて折れてしまう事業主さんや税理士が多いのも事実です。
ただこの言い分は、そもそも間違っているのです。
分かりやすく例をあげると、よくドラマや映画でも、殺人事件の裁判の場面というのがありますが、被告が殺人を起こしたときに使ったナイフ等を探してきて、証拠として裁判長に提出し「だからこの被告が犯人です」と主張するのは検察官側です。
弁護人側ではありません。
実は税務調査でも同じで、納税者が提出した申告内容に対して、否認指摘をするのなら、否認指摘をする側がその証拠等を探さなければなりません。
これを「立証責任」と言い、基本的には立証責任は調査官(税務署)側にあるのです。
ですから、税務調査で調査官が「証拠を提示できないと否認しますよ」と言って否認されるケースは、調査官と税理士の両方が、本来どちらに立証責任があるのか分っていないことで起きてしまっていることなのです。
「税金のプロに頼んでるのにそんなことが本当にあるの……?」
と思われるかも知れませんが、誤解を恐れずに言うと、税理士というのは税務(税法)のプロであって、法務(法律)のプロではありませんので、法律のことを知らないことはよくあるのです。
納税者にしたらたまったものではありませんが、実際にはこういったことはよくあるケースで、その証拠の一つが、先ほどの重加算税のあり得ないパーセンテージの数字としても現れているのです。
ただ、納税者を正しくお守りする身として本来あってはならないことですので、弊社では「税理士は税務だけ知っていれば良い」というような一般的な常識に捕らわれることなく、税理士の専門分野である税法に加えて、関連する法務(法律)の部分の研鑽も日頃から行っているのです。
話が逸れましたが、納税者に立証責任を押し付けようとする行為や発言があった場合、立証責任の根拠を元に間違っていると、調査官に対して主張・反論できることを覚えておいて下さい。
直接電話がかかってきた場合には?
実地調査後の交渉の際に、あえて納税者に直接電話をかけてきて「今から会社に行って良いですか?」と言う調査官もいます。
つまり、税務調査対策に長けた税理士が相手だと徴収できないので、いないところを突いて、社長の発言から否認してしまおうという魂胆です。
もしこういう電話がかかってきたら、
「税務調査に関しては、すべて税理士に任せているので、私に電話されても困ります。顧問税理士に直接電話してください」
と、キッパリ断って下さい。
税務署からの依頼を断るのは恐いかも知れませんが、こうやって断っても、法的には何の問題もありません。
その後、すぐに税理士に連絡して対処してもらうようにしてください。
抗議する時には誰に言うかがポイント!
ここまで、税務調査でよくあるホンの一部をご紹介してきましたが、このように、税務調査では理不尽なことも多く、色々と不満が出てくることもあるでしょう。
調査官が無理難題を言ったり、不当な税務調査ではないかと感じたり、資料を提示しているのに調査官が納得しないといったケースも多々あります。
要するに、調査官も出世がかかっていますので、否認指摘をして成績を上げようと必死なのです。
このような場合は、直接その調査官に抗議するのではなく、調査官の上司である統括官と話をするのが効果的な対処法になります。
なぜなら調査官には決定権がないからです。
税務署の構造は、基本的には税務署長をトップに、副署長、統括官、調査官の順番になっています。
この中で決裁権があるのは、統括官から上の人だけです。
会社でいうと統括官というのは課長クラスです。
よくドラマなどでもクレームを言うお客さんが「上司を出せ」といっている場面がありますが、意味合いとしてはあれと同じです。
統括官以上に話をしたら、調査官がすぐに納得したというケースは多々あります。
なので、税務調査の内容について抗議をする場合は、統括官以上と話をする必要があることを覚えておいてください。
根拠がないのにもっともらしく言ってくる場合は……
最初の方に、特に顧問税理士のいない個人事業主の場合は、経費で揉めることが多いと書きましたが、経費については法人でもよく論点になる部分です。
税務調査でよく調査官が言ってくるのが「社長さんの会社は接待交際費が多いですね〜」という言葉です。
実際に入られた方は、言われた方も多いかと思いますが、それに続くフレーズが、
「同業他社の平均はこれくらいですよ。どう考えても多いので、今回は半分だけで良いので修正申告してください」
という常套文句です。
このように調査官が口先だけで否認をしてくるケースが往々にしてあります。
そう言われると社長さんも
「うちは交際が多いのか〜、まぁ半分だけなら良いか」
と思われ、本質を分かっていない税理士の場合、それで納得してしまうケースも多いようですが、これは認める必要は全くありません。
そもそも「同業他社の平均より接待交際費が多いとダメだ」という法律などありません。
このように、調査官は適当なことを言って徴収しようとしてくることが多々ありますが、見破るポイントの一つは、具体的な数字や根拠があるかどうかです。
なのでこういった場合は
「交際費が同業他社の平均より多いとダメだという主張の根拠となる法律(条文)はなんですか?」
と問い返して下さい。
答えられない場合はデタラメだと思って間違いないでしょう。
調査が入らなければ大丈夫は間違い?税務署からのペナルティとは?
IT関係やネットビジネスにおける税務調査の対策について、ここまでご紹介してきましたが、中にはそれでも「調査に入られてないから大丈夫だよ……」と油断される方がおられます。
もちろん、税務署からペナルティを課せられるのは税務調査の時だけとは限りません。
詳しくは以下の記事にまとめてありますので、面倒くさがらず、日頃からしっかり申告と対策を行っておく必要があるでしょう。
関連記事>>>『危険!延滞税や無申告加算税などペナルティの税金の種類と内容とは?』
ネットビジネスの税務調査についてのまとめ
ここまで、主にIT関係やネットビジネスに関する税務調査の実態と、その対応策について極々一部ですが解説してきました。
冒頭で、「税理士は国家資格だからそのスキルは皆同じと思われがちだが、節税や税務調査対策は試験に出るものではないので、その実績や経験によって雲泥の差がある」とお伝えしましたけれども、具体的な内容を読まれてみて、その意味合いが少しはお分かりいただけたかと思います。
まず知っておかなければいけないのが、
・税務調査は正義のために法律に則って行われているとは限らない
(法律を理解していないがために、本来納める必要のない税金まで徴収されているケースが多いにある)
ということと、
・税理士や会計士にはそれぞれ得意分野がありスキルや力量は異なる
ということです。
これはお医者さんを選ぶ場合とよく似ていて、外科や内科、耳鼻咽喉科など、それぞれ専門分野があるように、実は税理士にも得意分野があるのです。
なので、日頃の風邪などであれば、近くのかかりつけ医の方が安心して相談できる出来るかも知れませんが、例えばここぞという大病の場合は、大きな病院で、その手術を何度も経験したことのある、知識と技術の豊富なお医者さんに執刀してもらった方が安心出来るでしょう。
つまり、確定申告の際の一般的な相談であれば、各税務署で行われているような無料の相談会で、日頃から一般的な税務に関して扱っておられる税理士さんに質問する方が手短に済むでしょう。
一方で、ネットビジネスの申告や税務調査など、専門的な内容の場合は、弊社に限らず、そのことに精通していて、知識や経験の多い専門家に相談することで、節税効果が上がったり、税務調査で追徴されずに済むなど、結果に結びついてくる可能性が高くなることはイメージして頂けるかと思いますので、そもそも税理士を選ぶ際は、あなたの業種や状況に合わせて選択することが、大切な資産を守る上ではとても重要になってくるのです。
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※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろんご相談頂いても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。