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転売の開業届

弊社は2009年に創業した、ネットビジネス専門の会計会社(税理士事務所)で、せどりや物販、アフィリエイトやYouTubeなど、各業界のトップクラスの方々の税務顧問も多数務めさせて頂いております。

転売についても、国内転売の他、中国や韓国、欧米から商品を輸入され、日本国内で販売されているクライアント様も多くおられますが、無料相談でもよく寄せられるのが、

「転売を始めるにあたって開業届けを出す必要はありますか?」

というものです。

そこで今回は、転売で開業届けを出すメリットとデメリット、また提出する手順や費用、注意すべきポイントなどについて解説します。

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開業届とは?提出するタイミングやメリットについて

開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、個人が新しく事業を始める際に、税務署に対して事業を開始後1ヶ月以内に届け出る書類になります。

少し難しい内容になりますが、「所得税法 第229条」に記されており、その条文には

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から1月以内に、税務署長に提出しなければならない。

引用元:所得税法 第229条 開業等の届出

と明記されています。

開業届けを提出する必要がある人は?

「開業届」というと、脱サラして独立する人だけが関係あるように思われがちですが、そうではなく、会社員として勤務しながら副業で事業所得を得られる場合も提出が必要になります。

開業届を提出するメリットとは?

開業届を出すことで税務上のメリットを受けることができます。

最大の利点は、青色申告の承認申請を同時に行うことができ、青色申告を選択すると、帳簿付けや申告方法に一定の条件はありますが、最大65万円の特別控除を受けることが可能になります。

個人の転売で開業届を出すメリットとは?

前章でも少し述べましたが、個人の転売で開業届けを出すことでいくつかのメリットがありますので、それらについて見ていきましょう。

青色申告で税金面の優遇を受けられる

個人の転売で開業届を提出すると同時に「青色申告承認申請書」も提出することができます。

これにより、税務上の大きなメリットが得られます。

  • 青色申告特別控除: 複式簿記などの必要条件を満たすことで、最大65万円の控除が受けられます
    (簡易簿記の場合でも10万円の控除が適用されます)。
  • 赤字の繰越し: もし事業が赤字になっても、その赤字を3年間繰り越して翌年度以降の所得と相殺することが可能です。
  • 家族従業員への給与支給: 家族従業員に対する給与を経費にすることができる「青色事業専従者給与制度」を利用できます。

信用力アップを見込める

開業届を出すことで、税務署に対して正式に事業を始めたことを届け出ることになりますので、これにより社会的な信用が高まることに繋がり、以下のような場面でプラスに働く可能性があります。

オフィスや倉庫を借りる際の審査に有利?

転売を行う場合、オフィスや商品を保管するための倉庫や作業スペースを借りるケースがあるかと思いますが、その際、開業届を提出していることで、確定申告や納税をしっかり行っている証明となり、賃貸契約の審査が通りやすくなることが考えられるでしょう。

融資や補助金、助成金などの申請が通りやすくなる?

銀行融資や日本政策金融公庫の創業融資、その他、補助金や助成金の申請時に、事業を証明する書類として開業届の控えを求められる場合があります。

その際、開業届を提出しておくことで、こうした資金調達の審査をスムーズに進められる可能性が高まるでしょう。

屋号付きの銀行口座を開設できる?

開業届を提出することで、「屋号付きの銀行口座」を作ることができます。

取引先への請求や入金時に、個人名だけよりも屋号がついた口座名の方が、より事業用としての認識を高めることに繋がるでしょう。

また税務上、注意すべきポイントとして、個人でビジネスを行う場合は、事業用の銀行口座とプライベートの銀行口座を同じにしていると、税務調査の際に全ての取引履歴を開示するよう求められることになりますので、資金の透明性をきちんと確保するためにも、屋号が付いているかどうかに関わらず、事業用とプライベート用の銀行口座は必ず分けるようにしましょう。

尚、銀行によっては、口座開設時に開業届の控えを提示するよう求められることもありますので、大切に保管しておきましょう。

クレジットカード審査等で職業証明になる?

転売では、資金効率を上げるために、仕入れや広告費などでクレジットカードを使う機会も多くあるかと思いますが、個人事業主の場合は、会社員のように「在職証明書」がありませんので、職業証明として開業届の控えを提示することで、クレジットカードの審査に通りやすくなることが考えられます。

また、銀行口座と同様の理由で、クレジットカードも事業用とプライベート用をしっかりと分けておくことが大切です。

開業届を出さなかったらどうなる?罰則やデメリットは?

転売で開業届を税務署に提出しなかったとしても、出した場合のメリットが受けられないだけで罰則は特にありません。

転売で開業届を出して個人事業主になる際の注意点とは?

開業届を提出するにあたっては、いくつか重要な注意点を把握しておく必要がありますので、事前に理解しておくようにしましょう。

開業届を出すと失業手当は受け取れない?

税務署へ開業届を提出することで、「求職者ではなくなり事業を開始した」とみなされますので、例えば脱サラ後、個人事業として転売を始められる場合など、失業手当(失業保険)の受給資格を失うことになります。

開業届によって扶養から外れるケースもある?

配偶者の扶養に入っている方が、転売で開業届を出す場合、社会保険上の扶養認定条件に影響が出る可能性があります。

所属している健康保険組合によって扱いは異なりますが、一般的には以下のようなケースがあります。

  1. 年収が一定額を超えていなければ、個人事業主でも扶養に入れる
  2. 個人事業主として起業した時点で扶養から外れる

扶養に入っていれば健康保険料の支払いは不要ですが、2.のように扶養から外れた場合、ご自身で保険料を納付する必要が出て来ますので注意が必要です。

開業届を提出する際に必要な費用はいくら?

開業届を提出するだけであれば費用は一切かかりませんので、税務署での手続きはすべて無料で行えます。

ただし、以下のような関連費用が発生することがありますので、代表的なものを見ていきましょう。

書類の作成や手続きの代行を依頼した場合

開業届は自分で作成して提出することが可能ですが、税理士や行政書士などの専門家に代行を依頼すると、事務所によって多少異なりますが、おおむね数千円〜数万円程度の手数料がかかるのが一般的です。

尚、弊社の税務代行サービスをお申し込みの方は、これらの書類は弊社が無料で作成致しますのでその料金はかかりません。

印鑑作成・登録に関する費用

個人事業を始めるにあたって、事業用の印鑑を作成し、印鑑登録をされる場合、登録費用はかかりませんが、印鑑の作成費用がかかります。

印鑑の種類や材質によって費用は変わりますが、一般的には数千円〜数万円になることが一般的でしょう。

転売での開業届を提出する手順について

転売ビジネスで開業届を提出する際の必要書類や流れを解説します。

必要な書類一覧

開業届けを出すにあたって必要な書類を揃えましょう。

個人事業の開業・廃業等届出書

この書類がいわゆる「開業届」になります。

国税庁の公式サイトからダウンロードするか、もしくはお住まいの地域を管轄する税務署の窓口でも入手できます。

青色申告承認申請書

青色申告を望まれる方は、この申請書を開業届と一緒に提出します。

こちらも国税庁サイトからダウンロード可能です。

本人確認書類

提出の際には、本人確認ができる書類も必要になります。

マイナンバーカードや運転免許証、またはパスポートなど、有効な身分証を準備しておきましょう。

転売ビジネスにおける開業届の書き方と具体的な記入例

転売における「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」の具体的な書き方とポイントについて、実際の開業届を使って詳しく解説していきます。

開業届

1. 提出先と提出日

1のところには、管轄の税務署名と提出日を記入します。

どの税務署が該当するかは、国税庁の公式サイトで確認できます。

提出日は、実際に窓口に持参する日または投函する日を記入します。

原則として開業日から1か月以内の提出が求められています。

2. 納税地の記入

納税地は以下の3つの中から、該当するものを選び住所と電話番号を記載します。

  • 住所地:生活の拠点である自宅の住所
  • 居所地:相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないもの、すなわち、そこがその者の生活の本拠であるというまでには至らない場所をいうものとされています。
  • 事業所等:店舗や事務所など、事業を行う場所

3. 氏名・生年月日・個人番号

ここには、本人の氏名(ふりがな含む)、生年月日、マイナンバー(個人番号)を記入します。

尚、押印は不要です。

4. 職業

転売を行う場合、「職業」欄には「小売販売業」や「ネット販売業」といった記載が一般的です。

特に決まったフレーズはありませんが、事業内容が伝わりやすい表現を選ぶと良いでしょう。

5. 屋号

屋号とは、あなたの事業名(ブランド名)にあたります。

今後のブランディングを意識して決めるのがおすすめです。

6. 届出の区分

「開業」の欄にチェックを入れます。

7. 所得の種類

転売ビジネスの場合、収益は「事業所得」に分類されます。

8. 開業日

開業届には、実際に事業を始めた日を記入します。

いつを「開業日」とするか明確な基準はありませんが、制度上は開業から1か月以内に提出することになっていますので注意しましょう。

9. 関連届出書の提出有無

「青色申告承認申請書」や「課税事業者選択届出書」を同時に提出する場合は、「有」にチェックを入れます。

10. 事業の概要

事業内容を簡潔に書きます。

ネット転売の場合は「インターネット等を利用した商品の仕入れおよび販売」といった書き方が多い印象です。

11. 給与の支払い状況

従業員を雇う予定がある場合、「従事員数」に人数を、「給与の定め方」には「月給制」や「時給制」など支払い方法を記入します。

専従者とは家族従業員を指し、使用人はその他の従業員を指します。

源泉徴収を行う場合は、「税額の有無」で「有」にチェックを入れてください。

12. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する場合、「有」にチェックを入れます。

これを提出することで、毎月納付ではなく年2回(半年ごと)の納付にすることが出来ます。

また、提出する時点で従業員を雇用する場合は、「給与支払を開始する年月日」も記入しましょう。

転売ビジネスの開業届を提出する方法とポイントとは?

転売に関する開業届けの具体的な提出方法とそれぞれのポイントを解説します。

税務署の窓口で提出する方法

最も基本的なのは、最寄りの税務署に直接出向いて提出する方法です。

窓口で職員に質問しながら手続きを進められるため、書類の書き方や記入ミスに不安がある方にはおすすめです。

一般的には「平日の8時30分〜17時まで(※土日祝は休み)」となっていますが、訪問する際は事前に税務署の開庁時間を確認しておきましょう。

郵送での提出方法

税務署が遠い場合や、時間の都合で訪問が難しい場合は、郵送での提出も可能です。

ただし、記入内容に不備があると受理されない場合もあるため、送付前にしっかり確認しましょう。

e-Taxを使ったオンライン申請

最近では、インターネット経由で開業届を提出できる「e-Tax(イータックス)」も普及しています。

この方法を利用するには、マイナンバーカードとICカードリーダー(もしくは対応スマートフォン)が必要です。

また、事前に「利用者識別番号」の取得を済ませておく必要がありますので注意しましょう。

開業届の控えは必ず保管しておこう

開業届を提出したら、必ず「控え」を手元に残しておきましょう。

この控えは、以下のような場面で必要になるケースがあります。

  • 屋号名義の銀行口座を開設する時
  • 小規模企業共済への加入手続き
  • 商標登録の申請時
  • 金融機関で融資を受ける場合
  • 保育園の入園申請など、就業していることを証明する時

もしオンラインで提出した場合は、e-Taxの受信通知を印刷するか、電子申請等証明書を控えとして保管しておきましょう。

開業届を出すと会社にバレる?

副業で転売を始める際、「開業届を出したら勤務先にバレるかも?」と不安になる方も多くおられますが、結論から言うと、開業届は税務署内で事業の届け出として扱われる書類であり、それを出しただけで会社側に伝わることは基本的にありません。

ただし、勤務先に副業がバレる可能性が全くないわけではなく、原因として代表的なのは住民税の額が増えることで会社に見つかるケースです。

給与所得以外の所得が増えると住民税が上がり、通常は「特別徴収(給与から天引き)」として会社経由で徴収されるため、金額の変化から会社に気づかれる可能性があるのです。

このリスクを避けるためには、確定申告時に住民税の取り扱いを「自分で納付する(=普通徴収)」にすることで、副業分の住民税は市区町村から個人宛に請求され、勤務先に通知されることがなくなります。

転売での利益を確保するなら税理士選びも重要?

転売などのビジネスを始められて、利益を増やしていくことに意識を向けられる方は多いですが、それと同じぐらい資産をしっかりと守るということも重要になってきます。

例えば開業の際に、青色申告の65万円控除を受けたくて、事業所得としての申告を考えられる方は多いかと思いますが、これも税務署から否認されれば青色申告の特典は受けられなくなってしまいます。

もちろん全く条件に満たないものはどうしようもありませんが、その条件も曖昧なので、税務調査対策をよく理解していない税理士に依頼をしてしまうと、より税金を徴収したい税務署の言いなりになってしまうことも多くあるようです。

特に転売などのネットビジネスの申告や税務調査では、一般のそれとは異なる対応が求められることも多くありますので、いかにそれらに強い税理士に依頼できるかによって、将来あなたの手元に残る金額に差が出て来てしまうのが実情です。

転売の税金や税務調査に強い税理士の正しい選び方についてはこちらをご覧下さい。

まとめ

今回は、転売ビジネスにおける開業届けの出し方やメリットとデメリット、注意点などについて解説致しました。

今後の税金などにも関わってくる内容ですので、適当な選択をして損をしてしまうことのないよう気を付けましょう。

具体的な節税実績や、無料での会社設立、無料節税シミュレーションについて見る >>> TOPページ

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