ここ数年で、ユーチューバーという職業も一般的に認知され、弊社でも、非常に有名なYouTuberの方や、ニッチな分野で活躍されている方の分まで、YouTubeであがった収益の節税対策や確定申告を代行させて頂いております。
中には簡単に出来るということで、YouTubeを使ったビジネスをいざ始めたものの、予め税金のことを考えておらず、毎月行わせて頂いている無料相談会やメールでの問い合わせで、
「何から手を付けて良いのかすら分かりません……」
とおっしゃる方もたまにおられます。
ただ、少々はバレないだろうだとか、いい加減な申告をしてしまうと、後で税務署から指摘をされ、ペナルティーの税金を払わされてしまう可能性もありますので、そんなことにならないよう、今回はYouTubeビジネスの確定申告のやり方について、実際の申告書の画像を用いて、基本的なことから解説していきたいと思います。
関連記事>>>『危険!延滞税や無申告加算税などペナルティの税金の種類と内容とは?』
そもそもYouTubeの税金は申告しなくてもバレないの?
先ほども少しお話しましたが、軽い気持ちでユーチューバーや、ご自身が出演されなくてもYouTubeを使ったビジネスを始めたものの、税金のことを考えておられなかった方からの問い合わせが寄せられるのですが、中には
「ネット上のことだし少々申告しなくてもバレませんか? いくらまでなら大丈夫ですか?」
とおっしゃる方も過去にはおられました。
ブログ等でもそんなことを書いておられる方がおられるようですが、結論から申しますとそれは大きな間違いです!
実際、少額でも調査に入られている方もおられますし、確定申告の時に何も言われなかったから大丈夫という判断自体がそもそも間違っているのです。
税務署が来てないから大丈夫は単に泳がされているだけ?
これは、YouTubeの税金に限ったことではありませんが、まず第一に、
「確定申告書を提出した時に何も言われなかったから大丈夫」
というのは、全く通用しません。
というのも、通常、申告書を提出した時に税務署から、内容について何か指摘をされることはありません(名前を書き間違っていたり、抜けていたりすれば言われるかも知れませんが……)。
申告内容が間違っていたり、不備があって税務署からお尋ねが来るのはかなり後になってからになります。また、
「税務署から何も言われたことないから大丈夫」
という方もおられますが、税務署の調査官も忙しいので、通常は、3年以上の資料をまとめて調査に入ります。
なので、数年何も言われてないので大丈夫というのは、単に泳がされているだけで、ある日突然、数年分の資料を片手にやってくるという可能性も多いにあるのです(よほどの凶悪事件でない限り、それが普通です)。
ユーチューバーは税務署にとって絶好のカモ!
相談者さんのお話を伺っていると、
「ネット上のことでもバレますか?」
と聞かれることがあるのですが、日頃から多くのネットビジネスの申告や税務調査に立ち合っている立場から申し上げると、その考え自体がむしろ逆で、
「ネット上のことだからこそバレる」
のです!
税務署の電子商取引専門チームとは?
国税庁内部のお話を申しますと、オークションやアフィリエイト、せどりや転売などのネットビジネスが拡大するに連れ、平成13年の1月から全国税局に、それらを専門的に調査監督する「電子商取引専門チーム」というのがつくられました。
具体的にその内容としては、
- 電子商取引事業者等に対し情報の元を見つけ出す資料源開発
- 先端領域における電子商取引の実態解明を目的とした実地調査及び調査手法の開発
- 電商チーム担当者相互の情報の共有化
- 実地調査等により習得した調査手法、調査・資料源開発事例、各種ノウハウの提供
- 国税局や税務署の情報技術専門官等からの要請を受けて実施する電子商取引事業者等に対する調査の支援
などがあげられます。
つまり、YouTubeからの収益というのは、事務所とのマネージメント契約や、広告主と直接交渉を行っている有名ユーチューバーを除いては、基本的にGoogleのAdSense報酬になるわけですが、ネットビジネスの報酬というのは電子送金されますので、全て記録が残ります(もちろんAdSenseだけでなく、他のASPも同様です)。
上記の具体的な内容にも書いた通り、電子商取引専門チームをはじめ税務調査官は、それらの情報を収集することが可能ですので、
- ASPから報酬が発生している
- ユーチューバーからの適切な納税を確認できない
となれば、1円でも多く税金を取りたい税務署からすれば、空振りしようのない確実な証拠を掴める絶好のカモだということがお分かり頂けるでしょう。
つまり、YouTubeの税金は少々申告しなくてもバレないというのは大間違いなのです。
関連記事>>>『せどりやアフィリエイトなどIT関係の税務調査の全貌を税理士が解説』
申告が必要なユーチューバーと不要な人の違いとは?
YouTubeから収益を得ていると一口に言っても、その額や本業か副業かの違いなど、さまざまなケースがあるでしょう。
結論から言えば、YouTubeを使ったビジネスからの収入がある方は、原則として確定申告が必要になります。
ただ、そんな中でも確定申告が不要な人の条件というのがあり、
「その年中の所得の合計が、すべての所得控除額の合計額より少ない者」
とされています。よく
- 年間38万円までは申告不要
- 年間20万円以下なら申告不要
ということを言われたりしますが、これらはそれぞれ根拠があり、正しく理解していないと間違って申告漏れになる可能性がありますので注意して下さい。
年間38万円(48万円)までの利益は申告不要?
まず、これについてですが、上記の条件に出て来る「所得控除」というのは、生命保険料控除や扶養控除、社会保険料控除などのことで、他にも全ての方が控除できる基礎控除という所得控除があります。
この控除額が38万円なので、一般的に専業の方であれば、年間の利益が38万円を超えなければ確定申告の必要がないと言われているわけです
(※令和2年分の確定申告からは、基礎控除の額は48万円になりました)。
会社員で年間利益が20万円以下なら確定申告は不要?
これもよく言われることですが、実は全ての方に当てはまるものではなく条件があります。
まずこれは、会社員の中でも年末調整のみで納税手続きが完了している方のみの特例です。
ということは、サラリーマンであっても、
- 年収が2,000万円を超えている
- 2ヶ所以上から給与を受け取っている
- 住宅ローン控除や医療控除などを受けるために確定申告が必要
これらの人の場合は、例え会社員であっても、1円の所得でさえ確定申告が必要になりますので、間違えないようにして下さい。
YouTubeからの報酬のどれに対して税金がかかる?
ここまで、YouTubeでの収入に対して確定申告が必要な方について解説してきましたが、では、何に対して税金がかかってくるのか、基本的なことについて説明します。
よくご相談を伺っていると、「利益」や「収入」、「所得」といった言葉がごちゃ混ぜになっている方がおられますが、これらは意味が異なります。
そもそも税金は所得にかかるもの
ユーチューバーに限らず、そもそも税金というのは「売上」や「収入」ではなく「所得」にかかるものです。
まずはそのことを覚えておいて下さい。
YouTubeの場合は通常、GoogleからのAdSense報酬(収入)が入って来ますが、これらの収入から、必要経費や控除などを差し引いたものが「所得」になります。つまり
「収入 − 必要経費や控除 = 所得」
というわけです。
ユーチューバーが経費に出来るものとは?
なので、所得を減らすために少しでも多く経費を計上しようと相談に来られる方も多いのですが、経費というのは税務署とよく揉めるポイントでもあります。
以下にユーチューバーの経費についてまとめてありますので、あわせてご参照下さい。
関連記事>>>『ユーチューバー(YouTuber)が確定申告で経費計上できるものとは?』
YouTubeからの収入は何所得として申告すれば良い?
さて、確定申告をする場合ですが、ユーチューバーの収益というのは主に、
- グーグルアドセンスの広告収入
- 広告主との直接契約による広告収入
になるかと思います。
個人の方がこれらを申告する場合、「事業所得」もしくは「雑所得」になります。
雑所得と事業所得、どちらが良い?
ではどちらで申告すべきかについてですが、これら二つを比較しますと、青色申告が出来たりと、事業所得の方が有利なことが多いので、
「事業所得にしようと思います」
とおっしゃる方が多いのですが、これらは自由に選べるものではなく、また判断基準も曖昧で、実際の業務実態によって判断されますので、裁判で争われることもしばしばです。
具体的には
- 営利性・有償性を有しているか
- 反復継続的に行われているか
- 自己の危険と計算において独立して営まれているか
- 精神的・肉体的労力の程度
- 人的及び物的設備の程度
- 安定した収益が得られる可能性があるか
といった点を基準に判断されています。
また、控除の額が増えるからと、青色申告の申請をしたけれども、その条件をよく理解しておらず、後から困られる方もおられますので、事業所得と雑所得の違い、また白色申告と青色申告の条件や、メリットとデメリットについても、以下の記事で事前に理解しておくようにしましょう。
関連記事>>>『知らなかったでは済まない!ネットビジネスの正しい税金対策法とは?』
ユーチューバーは実際にどれぐらいの税金がかかる?
よく
「YouTubeからの報酬が○○円ほどあるんですが、税率は何パーセントで、税金はいくらぐらいになりますか?」
とメールで問い合わせが来たりします。
結論から言いますと、それは分かりません。
というのも先ほどお伝えした通り、そもそも税金というのは「所得」にかかるわけですが、事業所得にしろ雑所得にしろ、どちらも「総合課税」という、他の所得と合計した金額をこの表に照らし合わせることで決まりますので、その方の所得合計が分からなければ税金の額は分からないというわけです。
例えばサラリーマンの方が副業で、YouTubeを使ったビジネスをされているとしましょう。
会社からの給料(給与所得)にYouTubeの所得を合計し、その金額を上記に当てはめます。
ちなみに雑所得で申告される場合、同じ雑所得のものも合算する必要が出てきますが、よくあるケースとしては、最近流行りの仮想通貨での取引や、海外業者を使ったFXでの取引も、合算しなければなりませんのでご注意下さい(国内業者のFXは総合課税ではなく分離課税ですので通算出来ません)。
YouTubeの消費税に潜む危険?
これは余談ですが、数年前にYouTubeを含むAdSenseによる広告収入の判断基準が変わりました。
万が一、以下の記事をご覧になり、該当される方がおられましたらご注意下さい。
関連記事>>>『税務署が来た?恐いYouTuberの税金や確定申告の盲点とは?』
YouTubeの確定申告のやり方について
それでは実際に、YouTubeの確定申告を行う手順について解説してきましょう。
確定申告書の入手方法は?
まず、申告をするためには書類を手に入れる必要があるわけですが、用紙は管轄の税務署で手に入れることが出来ます。
また、ネットを使われたい方は、国税庁のホームーページからダウンロードすることも可能です。
その他、国税庁の『確定申告書等作成コーナー』のサイトでは、オンライン上で確定申告書を作成し、プリントアウトすることや、そのままe-Taxを使って提出することも可能です。
関連リンク>>>『国税庁「確定申告書等作成コーナー(リンクは平成29年分ですのでご注意下さい)』
確定申告書の提出期間は?
上記で作成した申告書の提出期限は、2月16日から3月15日になります。
また、税金の納付期限も上記と同じ期間になりますので、忘れず納付を行うようにしましょう。
収支計算と帳簿書類
書類を手に入れたら、それに記入するための数字と資料が必要になりますので、YouTubeからの収入と支出の集計を出す必要があります。
初めてだとイメージし辛いかも知れませんが、白色申告の方や青色申告で10万円の特別控除を受ける方は、それぞれに費目別に集計した、お小遣い帳のようなものを作る感じで問題ありません。
ただ、青色申告をして65万円の特別控除を受けられる方は、貸借対照表(青色申告決算書の4ページ目)が必要になりますので、帳簿書類を作る必要があります。
尚、会計ソフトを使われている場合は、ほとんどのソフトで貸借対照表と損益計算書を作成できる機能があるかと思いますので、それで構いません。
必要なものを揃える
その他に必要なものとしては、
- 国民健康保険の支払金額が確認できるもの
- 国民年金の控除証明書
- マイナンバーカード(マイナンバーカードをお持ちでなく、マイナンバー通知カードの場合は、本人確認書類も必要になります)
- 生命保険料や地震保険料の控除証明書(加入しているもの)
- その他、各人の申告内容に応じた書類(例えば住宅ローン控除や医療費控除を受けられる方は、それらに応じた書類が必要です)
他にも、サラリーマンの方で副業としてYouTubeビジネスをされている方は、
- 給与所得の源泉徴収票
も必要になりますので、事前に揃えておきましょう。
「収支内訳書」や「青色申告決算書」に記入していく
上記のものが全て揃えば、実際に確定申告書を作成していく作業にかかります。
流れとしては、白色申告の方は「収支内訳書」から、青色申告の方は「青色申告決算書」から記入していくことで、スムーズに作成できるかと思います。
まず収支内訳書では、1ページ目の右側約1/3と2ページ目、青色申告決算書では2〜3ページに
- 売上や仕入
- 減価償却費
- 地代家賃
- 給与賃金や事業専従者
などの、主な費目の内訳を記入する項目がありますので、準備しておいた、YouTubeでの収支を元に記入していきましょう。
申告書類を確認する
以下に、記入順に沿って上記書類の画像を載せておきますので参考にして下さい。
収支内訳書P1
収支内訳書P2
青色申告決算書P2
青色申告決算書P3
それらの記入が出来たら、収支内訳書1ページ目の左側、もしくは青色申告決算書の1ページ目にある損益計算書に、それらの内訳の合計額と、それ以外の経費を集計した金額を書き入れ、所得金額を計算します。
青色申告決算書P1
青色申告決算書P4
確定申告書B第二表を記入する
事業に関する書類の作成が完了したら、次は確定申告書の記入になりますが、確定申告書には第一票と第二表があります。
手順としては、経験のない方は順番に記入される人がおられますが、第二表から記入していく方が分かりやすいと思いますので覚えておきましょう。
申告書B第二表
この第二表で記入が必要な部分は主に、右側にある
- 社会保険料控除
- 生命保険控除
- 扶養控除
などの所得控除に関するところです。
これらはそれぞれの状況により内容が異なってきますので、事前に準備をした、それぞれの控除の証明書などを確認しながら記入していきましょう。
その他、源泉徴収された所得がある方や、雑所得、配当所得・譲渡所得、一時所得などがある方の場合には、
- 「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」の欄
- 「雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項」の欄
をそれぞれ記入します。
また、事業専従者がいる場合、16歳未満の扶養親族がいる場合には、
- 「事業専従者に関する事項」
- 「住民税・事業税に関する事項」
にも記入をしましょう。
YouTubeでの副業を会社にばらしたくない人は?
サラリーマンの方からよく受けるご相談で、
「副業としてやってるんですが、会社にバレない方法は何かありますか?」
というのがあります。
サラリーマンの方が会社に見つかる最大の原因は、住民税額の変化です。
要するに、お給料の他に収入があることで、それらが合算され、住民税の額が変わってしまうことが原因となるわけですが、対策としては、
「住民税・事業税に関する事項」
の「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」欄(確定申告書第二表の右下)にある「自分で納付」に○を付けることで、YouTubeの所得に対する住民税を、会社の給与から天引きせずに、自分自身に直接請求してもらうことが可能になりますので、住民税が原因で副業がバレるリスクは少なくなります。
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確定申告書B第一表を記入する
第二表を書き終えたら、最後は確定申告書の第一表になります。
確定申告書B第一表
最初に左上の収入金額等の箇所から記入していきましょう。
収入金額等の事業・営業等(ア)欄と所得金額(1)欄に、収支内訳書、もしくは、青色申告決算書を参照して金額を記入していきます。
次に、左下の所得から差し引かれる金額の部分ですが、確定申告書第二表の右半分に記入した情報を元に、それぞれに応じた所得控除額を計算して、それぞれの欄に記入しましょう。
左半分の記入が終わったら次は右半分、税金の計算になります。
所得金額の合計額(9)-所得から差し引かれる金額の合計額(25)で、課税される所得金額(26)を計算できます。
課税される所得金額が計算できれば、あとは所得税額を計算して((27)、(38)、(40))、所得税額に対する復興特別所得税額を計算していきます(41)。
あとは、所得税額と復興特別所得税額を合算すれば、納める税金の計算が完了します((42)及び(47))。
ただし、所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されていたり、予定納税をしているなどの場合には、(43)~(46)欄にその金額を記入して、所得税及び復興特別所得税の額からそれらを差し引いた金額を「納める税金(47)」または「還付される税金(48)」に記入していきます。
最後に、右下のその他の箇所には、専従者給与の額や青色申告特別控除額を、それぞれの申告内容に応じて記入して完了です。
以上が確定申告書の作成過程です。
まとめ
今回はYouTubeでの収入の確定申告について解説をしてきましたが、ご相談者の中には、そもそも開業届けを出しておられなかったり、準備費用を経費として計上されていない方もおられました。
それらは逆に損をしてしまう可能性もありますので、理解しておくようにしましょう。
関連記事>>>『個人事業の開業届の書き方と確定申告の経費で得する法を税理士が解説!』
また、今回は所得税に関する申告の方法をご紹介してきましたが、他にも消費税の申告もあります。
該当される方は以下もご参照下さい。
関連記事>>>『図解!失敗しない消費税の中間納付や計算方法と申告書の書き方を解説』
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