この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
これまで有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
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自社サービスや商品の宣伝や、アフィリエイトなどのネットビジネスでも使われるPPC広告、いわゆるYahoo!やGoogleのリスティング広告ですが、実は個人事業主の方の確定申告や、法人決算をする際、これらの消費税についてちゃんと申告されておらずに、税務署から指摘をされ、ペナルティーを課せられるといったケースが、ここ数年でかなり多く報告されています。
「私は税理士に任せているから大丈夫!」と思われている方も多いようですが、残念ながら、税理士や会計士に依頼をしていても追徴されている方が多く、つまり税金のプロである税理士でも、間違った申告をしてしまっていて税務署からペナルティーの税金を請求され、弊社へ相談に来られるというケースも多くあります。
ただこれはある意味、起こるべくして起きている問題で、批判するわけではなく、一般の税理士さんは「税金の専門家」であっても、「ネットビジネスの専門家」ではありませんので、例えば「Googleアドワーズやアドセンスで〜」、「PPCのYahoo!リスティングが〜」と言われても、その仕組みや判断基準などをご存知ない方が多いことから、気付かぬ内に間違った申告をされてしまっているというケースです。
ちなみに税務署というのは、「裏取りが獲れて指摘し易いパターン」を見つけると、同じポイントを順番に、手当たり次第、税務調査で突いていくという方法をとりがちなので、間違えたまま放っておくと、いずれ指摘をされ、ペナルティーを課せられる可能性が非常に高い部分ですので、今回は特に間違え易い、Googleアドワーズの消費税について、解決策も含めて解説していきます。
Googleアドワーズ(AdWords)の消費税の遷移
PPC広告の中でも大手であるGoogleAdWords(アドワーズ)と、Yahoo!リスティング(旧オーバーチュア)。見た目やシステムも非常によく似た広告ですが、実はその税金のかかりかたについて、以前は全く異なるものでした。特にGoogleアドワーズについては、特殊なケースだったが上に、申告の落とし穴が生まれていますので、以下に流れを説明していきます。
平成27年9月30日までのGoogleアドワーズの消費税
先に概要をお伝えしますと、同じPPC広告でも、「YAHOO!リスティング」には消費税が課税されていますが、「Googleアドワーズ」には消費税が課税されていませんでした。
なぜこのような違いが起こるのかと言いますと、ネット広告の場合、広告を出している人がどこで出稿をし、それをどこで利用されているかは全く関係なく、実はその広告を「運用するサーバーがどこにあるか」で、消費税が課税されるかどうかが判断されていました。
その結果、「YAHOO!リスティング」と「Googleアドワーズ」は、一見同じようなリスティング広告のサービスであるにも関わらず、YAHOO!の方は国内のサーバーで運用されているので消費税が課税されていますが、Googleは国外にあるサーバーで運用されているため、消費税が課税されていないという差異が生じていたのです。
つまり、同じ広告料があなた(もしくは、あなたの会社)から支払われているのに、YAHOO!がそのうち8%を消費税として日本国に納税している一方で、Googleは消費税の納税をしていないということが起きていたわけです。
冒頭でも少しお話しましたが、これらは税務のことというより、Yahoo!やGoogleのシステムの知識になりますので、税理士の中でもご存知の方が少なかった為、Yahoo!とGoogleの消費税を同じように申告してしまっていて、現在でも税務調査で指摘をされ、ペナルティーの税金を払わされるという事態が起きているのです。
改正後の消費税の基準と変更点について
その後、国も海外企業から消費税をしっかりと徴収する方向へ動いたのか、平成27年の消費税法改正により、「運用するサーバーがどこにあるか」で消費税が課税されるかどうかを判断するという基準自体が変更になりました。
これに伴い、Googleアドワーズを利用している方には、Googleから
【Google AdWords: (重要)AdWords アカウントに関する税の変更について】
という件名のメールが一斉に届きました。以下がその内容の一部です。
「2015年10月1日以降は、改正消費税法(2015年)に従って、国外事業者により提供された事業者向け電気通信利用役務に対する消費税については、リバースチャージ方式の対象となるため、お客様の責任で申告、納付していただく必要がございます。Google AdWordsサービスも、下記の通り、事業者向け電気通信利用役務となります。」
とあります。
つまり、Googleアドワーズは、シンガポール法人である「Google Asia Pacific Pte Ltd.」などの外国法人からサービスの提供を受けていますので、平成27年の9月30日までは消費税とは関係のない取引でしたが、同年10月1日からはサービス内容は何ら変わりなくとも、消費税の課税される取引になったというわけです。
なぜ基準が変わると消費税が課されるのか?
なぜ今回のような、ややこしいことが起きているかと言いますと、そもそも、消費税というのは日本国内での消費に対して課税される税金ですので、消費税の課税の対象となる取引は国内取引であり、国外取引は消費税の課税の対象とならない(不課税)取引なのです。
消費税の課税される国内取引に該当するかどうかを、以前(平成27年9月30日まで)は「サービスの提供元」の会社の住所等(すなわち「運用するサーバーがどこにあるか」)で国内取引か国外取引かを判定していたものが、この改正以後は「サービスの提供を受ける側」の住所等で判定されることになったというわけです。
つまり、Googleアドワーズのサービスを外国法人から受けていたとしても、そのサービスの提供を受ける皆さんが日本で事業を行っていれば、その取引は国内取引に該当し、消費税が課税されることになったということです。
GoogleAdWords以外に影響を受けるサービスとは?
このように、国内取引と国外取引の判定基準が、税制改正によって見直されたわけですが、この判定基準の変更の影響を受けるのは、実はGoogleアドワーズだけではありません。
皆さんの中には、Googleアドワーズ以外にも、ネットを使ったサービスを利用されている方が多いと思いますので、具体的にどのようなサービスが影響を受けるのか見てみましょう。
この改正の影響を受けるサービスは「電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかで判断されるのですが、国税庁では、電気通信役務の提供の範囲や制度の仕組み・留意点などについて「国境を越えた役務の提供に係る消費税Q&A」を公表しています。
それによれば、電気通信役務の提供に該当するものとして、
- インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
- 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
- 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
- インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
- インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
- インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
- インターネットを介して行う英会話教室 など
とされています。
一方、電気通信役務の提供に該当しないものとしては、
- 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報の伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)
- ソフトウエアの制作等(著作物の制作を国外事業者に依頼し、その成果物の受領や制作過程の指示をインターネット等を介して行う場合)
- 国外に所在する資産の管理・運用等(資産の運用、資金の移動等の指示、状況、結果報告等について、インターネット等を介して連絡が行われる場合)
- 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等(情報の収集、分析等を行ってその結果報告等について、インターネット等を介して連絡が行われる場合)
- 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等(訴訟の状況報告、それに伴う指示等について、インターネット等を介して行われる場合)
- 著作権の譲渡・貸付け(著作物に係る著作権の所有者が、著作物の複製、上映、放送等を行う事業者に対して、当該著作物の著作権等の譲渡・貸付けを行う場合に、当該著作物の受け渡しがインターネット等を介して行われる場合)
となり、通信そのものや情報や成果物をインターネットを介して送信するといった、他の資産の譲渡等に付随して電気通信回線を介する行為については該当しないこととなります。
改正後のアドワーズの課税方式は?
さて、Googleアドワーズが消費税の課税される取引となることがわかったところで、その課税方式はどうなるのかですが、消費税法では、その電気通信利用役務の提供が事業者向けなのか消費者向けなのかによって課税方式を分けていますけれど、Googleアドワーズは事業者向けサービスに該当するため、先ほどのGoogleからのメールにもありました通り、「リバースチャージ方式」というものの対象となります。
リバースチャージ方式とは?
あまり聞き慣れない名前だと思いますので、分かりやすく例を挙げて説明していきますね。
例えば、通常1,000円(税抜)のものを1,080円(税込)で購入した場合、相手に対しては1,080円を支払うことになります。
これがリバースチャージ方式の場合だと、上記の例では1,000円を相手に対して支払い、消費税の80円は、買った側(役務の提供を受けた者)が税務署(国)に直接納税することになる、これがリバースチャージ方式です。
改正後も危ない!アドワーズ消費税の対処法について
上記、「平成27年9月30日までのGoogleアドワーズの消費税」でも説明しましたが、平成27年9月30日までは、Googleアドワーズには消費税が課税されていませんでした。
なので、Googleアドワーズを使用していて、申告の際に消費税が課税されていると勘違いして、Yahoo!リスティングと同じ処理していた場合、税務署から過少納付とみなされ、ペナルティーとして「過少申告加算税」と「延滞税」が課されることになります。
具体的に説明しますと、例えば100万円分のアドワーズ広告料に対して、消費税が課税されていないにも関わらず、74,074円(100万円×8/108)を消費税として処理してしまっていた場合、74,074円の消費税の納付が不足していることになるわけです。
ではどうすれば良いのか、その対処法ですが、まず行うべきこととして、もし平成27年9月30日までのものについても、間違えて申告していたのであれば「自主的に修正申告」することで、延滞税は課税されますが過少申告加算税は課税されません。
ですから、これを見られた方で適切な処理がされていない場合は、一刻も早く修正申告することをお勧めします。ポイントは「自主的に」ですので、税務署から指摘をされてからでは遅いのです。なので放っておいてはいけません。急ぐ必要があります。
ちなみに、毎月行っている弊社の無料相談会でも、勘違いしておられる方が多いのですが、既に税制改正されて、Yahoo!リスティングもGoogleアドワーズも同じになっているから、今からは何もしなくても大丈夫だと思われている方がいらっしゃったら、それは大きな間違いです。
税法改正の効力が、改正前まで及ぶことはありませんが、税務調査というのは、数年前まで遡ってやってくるのが一般的です(大体3年分ぐらいのデータを持ってやってくることが多いです)。
また、IT関係やネットビジネスの税務調査というのは一般のそれとは異なり、オンライン上にデータが残っている他、専門調査官という、IT関係にとても詳しい専門官が同行してきますので、税理士側もネットビジネスに詳しい者でないと、太刀打ちできない構図になっているのです。
話が少し横道に逸れましたが、ちなみに修正申告をしなかった場合、税務調査リスクが増加しますし、この件に関しては、確実な証拠が税務署側にあるため(申告書はもちろんオンライン上の記録も彼らは持っています)、先ほども申しましたが、税務署側からすれば、税務調査に入れば確実に追徴がとれるケースです。
なので税務署員は自身の成績アップのために喜んでやってきますし、完全に申告者や税理士側のミスなので「まぁ大丈夫だろう」と放っておいて、調査に入られてから泣きついても、全くもってどうしようもないのです。
以上のことから、指摘をされて「過少申告加算税」まで課せられる前に、面倒くさがらずに修正申告をされることを強くお勧めします。
法人税や所得税の更正の請求も可能
また、この消費税を修正申告する場合、逆に法人税や所得税(以下法人税等という)の更正の請求をすることが可能です。
ちなみに「更正」とは、平たく言うと「修正」のような意味ですが、申告期限後に納税者が本来払うべき税額より少なく納税した場合には「修正申告」を、多く払い過ぎた場合には「更正の請求」を行うことになります。
なので、消費税を修正申告することにより、法人税等を計算する場合の所得が減少しますので、法人税等の還付を受けることが可能となります。
改正後にリバースチャージの処理をする必要があるかの注意点
平成27年10月1日以降、Googleアドワーズに消費税が課されているわけですが、これに伴うリバースチャージの処理をしなければならないのかの注意点として、
- 自社の課税売上割合が95%以上なのかどうか
- 自社が簡易課税制度を利用しているかどうか
この二つに注意する必要があります。
その理由についてですが、自社の課税売上割合が95%以上の場合には、今回の消費税法改正によるリバースチャージの処理については、当分の間、なかったものとして処理をするという経過措置があるのです。
つまり、この経過措置が終了するまでの間は、課税売上割合が95%以上であれば、改正前までと変わらない処理で大丈夫だということになります。
ちなみに、課税売上割合とは、自社の売上全体の内、消費税の課税される売上がどれだけあるかの割合のことを指します。
一般的なビジネスでは課税売上になるケースが多いかと思いますので、ほとんどの方は課税売上割合が95%以上になることが多いと思いますが、不動産の売買や有価証券の譲渡、診療所などの社会保険医療や介護保険サービスでの売上がある場合、それらは非課税売上となりますので注意が必要です。
なお、非課税売上にどんなものがあるかについては、以下の国税庁ホームページで確認することができます。
・国税庁ホームページ「タックスアンサー No.6201 非課税となる取引」
また、簡易課税制度を利用している場合には、「みなし仕入率」という消費税法で定められた一定の割合で消費税額を控除することになりますので、こちらもそれまでと変わらない処理で大丈夫ということになります。
まとめ:ネットビジネスの税金申告は一般のそれとは違うことをまず知る
ここまでGoogleアドワーズの消費税について解説をしてきましたが、実は消費税というのは税務の中でも複雑な部類に入る上、今回のようなネットビジネスに精通していないと分からないようなものの場合、税理士や会計士でも間違えてしまうということが実際には起きてきます
(なので、上記でもし分からないところがありましたら、電話や以下のメールフォームからお気軽に無料相談をご利用下さい。契約を迫ったり勧誘等は一切ございませんのでご安心下さい)
誤解のないように申し上げておきますと、同業の方を批判するつもりは全くなく、よく税理士は国家資格なので、どの税理士や会計士に頼んでも同じだと思ってらっしゃる方がおられますが、それは大きな間違いです。
実際にはお医者さんと同じように、それぞれに得意分野や専門分野がありますので、「町のかかりつけ医」のように、一般的な税金のことについて、広く浅く皆さんの相談に乗っておられる方もおられれば、年間で何百と手術をこなしている「脳外科手術の権威」のような専門分野に長けた税理士もいます。
なので、確定申告前の一般的な相談は、前述の税理士さんの方が良いかも知れませんし、専門的な内容については、弊社に限らず、ご自身のビジネスに合った税金の専門家へ相談される方が、長い目で見て節税やビジネスの成長にも繋がるでしょう。
よくある失敗談に、「安かったから」、「知り合いに居たから」などの理由で税理士を選んでしまったというのがありますけども、仮に脳の重い病気にかかったとき、「安かったから」、「知り合いだから」という理由で、全く専門分野の違う、例えば皮膚科のお医者さんに手術を依頼したくはないでしょうし、 また科目は同じでも、その手術を行うのは初めての方に執刀してもらうのも、出来れば控えたいと思うのと実は全く同じことです。
自分のビジネスに合った税理士さんを探す労力や、顧問料を少しケチったばかりに、それ以上に税務調査で持って行かれていては全く本末転倒ですので、まずはご自身でネットビジネスのことを勉強された上で、税金面でもしっかりと守りを固めて利益を残すことを心がけるようにしましょう(2017.4.17)。
※上記は分かりやすい文章であることに重点を置いているため、一部、税法上の正確な表現とは異なる点がございます。予めご了承ください。
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※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろんご相談頂いても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。