家賃を経費に確定申告

弊社はIT関係やネットビジネス専門の会計事務所ですので、例えばせどりや輸出入物販、またアフィリエイトやYouTuber等をされている方からのご相談を日々いただくのですが、お客様の中には実店舗や事務所を持たず、自社サイトやブログの他、Amazonや楽天、ヤフオクやメルカリ、BASEなど、インターネット上のプラットフォームを活用して、商品やサービスを提供されている方々も少なくありません。

こういった実店舗やオフィスがない場合でも、例えばせどりや物販などをされている方だと、その在庫を自宅で管理されていたり、自宅の一部を発送の作業場に当てられているケース等も多くあるでしょう。

なので、自宅家賃の一部を事業の必要経費として計上されている方も多いようですが、実は個人でされている場合、その必要経費の考え方にはルールがあり、そのルールを守らずに計上してしまうと、後に税務署から指摘され、ペナルティを課せられる可能性もありますので注意が必要です。

今回は個人事業において、この自宅の家賃を経費として計上する際の基本的な考え方を、もう少し掘り下げて解説してみましょう。

 

家賃を経費として計上したことを争った裁判では?

まずは具体的な裁判例を見ていきましょう。

平成25年10月17日判決 東京地方裁判所での裁判で、自宅家賃などの経費計上について争った裁判があります(実際には自宅家賃以外についても争っていますが、今回は自宅家賃の部分だけをピックアップして記載致します)。

この裁判の原告は、保険の代理店を営む個人事業主で、自宅(3LDK2階建、戸建ての賃貸)のリビング等を利用して、代理店や顧客に商品説明やセミナーを行っていて、そのスペースは常時業務に使用していると主張し、家賃の60%を経費として計上していたが、裁判では認められなかったというものです。

裁判所の判断を判決文から一部抜粋しますと

本件住宅は、全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、本件住宅の一部について、居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にないことが明らかであり、原告がその家族と共に本件住宅に居住していることを併せて考えると、本件住宅のリビング等を本件各業務の専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していなかったとは考えられず、むしろ、居宅である本件住宅において、原告が家族と共に家庭生活を営みつつ、本件各業務及びこれに関連する業務などを行っていたものと認めるのが相当である。

したがって、本件住宅のうちのリビング等が、本件各業務のためのいわば専用スペースとして使用されていたことを前提として、本件地代家賃のうち本件住宅の全面積にリビング等が占める割合に相当する部分を本件各業務の遂行上必要な金額であるという原告の主張を採用することはできない。

仮に、原告が主張するとおり、商品説明やセミナー等のためにリビング等を使用し、当該時間中は、リビング等を原告ら家族の家事のために使用することができないため、当該時間中はリビング等が本件各業務専用に使用されていたことがあったとしても、本件地代家賃のうちで本件各業務の遂行上必要な部分を明確に区分することができないものといわざるを得ない。

このような内容が記載されています。

この裁判で争点になっている自宅家賃ですが、税法上は「家事関連費」と言って、その家事関連費の経費のルールに沿って考える必要があります。

家事関連費とは?

ビジネスを行っている方であれば必ず耳にする「経費」ですが、相談をお受けしていて非常に多いのが、明確にビジネスにしか使用していないものと、プライベートでも使っているものとが混在しているケースがよくあります。

例えば分かりやすいものでいうと、自宅の一部をビジネスで使われている場合、水道光熱費や通信費、家賃などがこれにあたるかと思いますが、こういった費用の事を「家事関連費」と言います。

この家事関連費ですが「家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られる」とされていて、ルールが決まっています。

関連リンク>>>『国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識』

家賃を経費にできるか?家事関連費の考え方について

先程、「家事関連費」を必要経費とする際のルールが決まっていると書かせていただきましたが、そのルールをもう少し細かく見ていきましょう。

国税庁のホームページには以下のようにも書かれています。

「主たる部分」又は「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。

「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

引用:国税庁 家事関連費 一部抜粋

一見すると、使っている割合が50%超えていればOKかのように見えますが、実はルール上は経費と考えられそうなものであっても、最終的に総合的に見ての判断となりますので、似たようなケースでも、納税者の状況によっては税務調査で指摘を受け否認されてしまう可能性が無いとは言えません。

ではその判断基準について、順にポイントとなる部分を見ていきましょう。

業務の遂行上必要かどうかと50%基準とは?

家事関連費が必要経費と考えられるかどうかの判断をする時に、業務の遂行上必要かどうかという点を見ていきます。

その業務の遂行上必要かどうかの判断は「その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする」となっていて、基準になる割合が50%となっています。

使用割合で判断することはわかりましたが、では使用割合が50%を超えなければ経費と考えられないのでしょうか。

こちらは、前提として「明確に区分できていれば」というのが重要にはなりますが、50%に満たなくても、使った割合だけ必要経費と考えることができるとされています。

もちろん使った割合ですので、使用割合が30%であれば30%分の金額が必要経費として考えることができるという事になります。

では次のポイントも見ていきましょう。

業務とプライベートが分けられているかが重要!

家事関連費は、業務とプライベートが「明確に分けられているのかどうか」もポイントになります。

裁判では、リビングの一部を業務にのみ使用していたと主張していましたが、家族との生活が主であるリビングが、たとえ業務にしか使用していない時間があったとしても、それを明確に区分出来ているとは言えない、として否認されています。

このように、リビングのような一般的に家族と共有で使用する場所を按分して計上することには無理があるかと思いますが、複数ある部屋の内の一室を業務にのみ使用しているというのであれば、比較的、明確に区分できていると主張しやすくなると言えるでしょう。

まとめると、

  • 明確に区分できる:50%基準に関係なく必要経費と考えられる(使用割合分のみ計上)
  • 明確に区分できない:使用割合が50%以上であれば必要経費と考えられる(使用割合分のみ計上)

これに業務や経費の内容、家族構成なども含め総合的に判断することになるため、自分では「50%超えてるから経費だ」と思っていても、税務調査で指摘されるケースも考えられますので、その割合とした根拠なども残しておき、税務調査に対応できるよう準備しておくことが重要です。

まとめ

実は、ブログやネット上の口コミなどを見聞きして「ビジネスやってたら結構何でも経費に出来るんですよね?」とおっしゃる相談者の方も少なくないのですが、今回の記事をお読みいただければ、何でも経費にできるわけでは無いということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

例えば個人のネットビジネスの場合、パソコンやタブレットなども仕事とプライベートの両方で使われていることもよくありますが、経費として計上する場合は家事関連費と同様に、何事も主張するための根拠を残しておくことがとても大事です。

ルールを知らずに経費にしていて、後から指摘を受けて余計な税金を支払わなくても良いように、今からその必要経費の考え方は正しいのか再確認するきっかけになれば幸いです。

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