クレカは領収書にならない

この記事を書かせて頂いているのは令和5年の5月ですが、この時期は個人の確定申告も終わり、今月からコロナの規制もなくなったことで、実は本格的に実地での税務調査が増えています。

そんな税務調査が増えているという状況の中で、特に目立って増えているのが「クレジットカードで支払ったもので、領収書の保存のないもの」を否認・指摘するといった事案です。

弊社に寄せられるお問い合わせでも「カードで払った分は、領収書が無くても、カード会社が発行する明細を保存しておけばいいんですよね?」と聞かれることがあるのですが、結論から言いますと、カード明細の保存だけではダメです。

このような問い合わせでは「経費として計上できるかどうか」を気にされるケースが多いのですが、今回の税務調査で指摘される事が増えているのは「消費税」についてでして、令和5年10月1日にインボイス制度がスタートするその前から、消費税のルールについて確認や指摘を強化しているようです。
(なのでインボイス制度開始後にこの記事を読まれている方も是非知っておいて下さい)

今回は、なぜカード明細の保存だけではだめなのか、税務調査でどのような部分が指摘されているのか、消費税の仕入税額控除のおさらいも含めて解説していきたいと思います。

 

消費税の基本的な考え方について

そもそも消費税は、消費者から預かった消費税から、仕入れの際に支払った消費税を差し引き、残った金額を国に納めるのですが、納める義務があるのは消費税の課税事業者だけで、課税事業者に該当しない場合(免税事業者)は、消費税を納める義務はありません。

簡単な数字で例えますと、消費者から預かった消費税が100円で、仕入の際に支払った消費税が70円なら、残りの30円が納める消費税の額になります。

この仕入れの際に支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」というのですが、これを適用するには要件があり、要件を満たせば差し引いても良いよ、というルールになっています。

それではそのルール(要件)について見ていきましょう。

消費税の仕入税額控除の適用を受けるための要件とは?

仕入税額控除は、インボイスに対応した請求書等の保管だけでなく、法定事項が記載された帳簿の保存も要件になります。

ここでは帳簿の記載については割愛しますが、インボイスに対応した記載事項について、国税庁のサイトではこのように書かれています。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

引用元:国税庁 適格請求書の記載事項

上記の4と5、1の登録番号がインボイス制度がスタート後、新たに記載しなければならない事項となります。

これだけの内容を記載しなければ、適格請求書等には該当せず、仕入税額控除ができなくなるというのがインボイス制度なのです。

※改正により緩和措置が講じられていて、一部では扱いが異なりますが、今回は原則の考え方で説明させていただきます。

確定申告でクレジットカード明細は使えない?

相談をお受けしていると、クレジットカード会社から発行される請求明細が領収書の代わりになると思われている方が多くおられます。

大手クレジットカード会社のサイトで領収書の代わりになりますと書かれていたりもしますので、誤解されている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、国税庁のサイトでは、カード会社から発行される請求明細書が、消費税法上の請求書等に該当するかどうかの問いに対して以下のように回答しています。

クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。

引用元:国税庁 カード会社からの請求明細書

このように、消費税法上の請求書等に該当しないのであれば、消費税の仕入税額控除の要件は満たしていない事になり、カードの明細だけでは不十分だと言うことがわかります。

あくまでも、相手方の事業者が発行した領収書等が消費税法上の請求書等に該当する事になりますので、しっかりと領収書を受け取り保管することが重要になります。

ただ、実際のところ、領収書が発行されないということも少なくありません。

そういった場合はどうすべきなのでしょう?

領収書が発行されない時の対応方法は?

領収書が発行されない場合の一番基本的な対応としては、相手方の事業者に領収書の発行を依頼することです。

依頼されれば発行しますよ、というスタンスの事業者もおられますので、ただ、待っているだけでは発行されないケースも少なくありません。

もし紛失した場合は、再発行を依頼しておくようにしましょう。

ただ、このように依頼をしても発行してくれないケースがありますが、この場合はどのように対応すれば良いのでしょうか。

どうしても発行してもらえない場合は?

理由は様々ですが、請求書等を発行しない(してもらえない)ケースも考えられます。

領収書が無い=絶対に仕入税額控除できませんとはならず、この場合、国税庁のサイトでは以下のように説明しています。

請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときは、帳簿に消費税法第30条第8項の記載事項に加えて当該やむを得ない理由及び課税仕入れの相手方の住所又は所在地を記載して保存することにより、仕入税額控除の適用を受けることができる旨が定められています

引用元:国税庁 インターネットを通じて取引を行った場合の仕入税額控除の適用について

あくまでも「やむを得ない理由がある場合」ですので、ただ単に領収書がありませんでは通用しませんので、ご注意ください。

インボイスの発行義務について

インボイス制度スタート後は、インボイス発行事業者は課税事業者からインボイスの発行を求められた場合にはインボイスの発行を行う必要があります。

また、その交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。

ではクレジットカードの利用票は領収書の代わりになる?

先ほど、クレジットカード明細は領収書として使えないとお伝えしましたが、では実店舗で買い物をした時に渡されるクレジットカードの利用票はどうでしょう?

よく見かけるのは、緑やオレンジといった色付きの紙に印字された、CARDNETやINFOXなどの端末を利用したクレジット売上票かと思いますが、これであれば領収書の代わりになるのでしょうか。

実はこれも税法上、領収書の代わりにはなりません。

これは信用取引を行った事を記載しただけのもので、冒頭でご説明させていただいたインボイスに記載すべき項目1から6の全てが記載されていませんので、消費税法上、インボイスの代わりにはなりません。

二重計上に注意?

実店舗でクレジットカードを利用して買い物をした時に、領収書(レシート)と別にカードの売上票を渡される事があるかと思います。

このレシートと売上票を保管する際に、注意しなくてはならないのが、レシートと売上票を別々にして保管してしまうと、会計処理を行う際に誤って重複して処理してしまう可能性が出てきます。

クレジットの売上票での記帳処理を行っていない場合は重複しませんが、カード明細と同様に、領収書の代わりとして売上票で処理を行っていると、重複してしまう可能性がゼロではありませんので、注意が必要です。

もし重複した場合、実際の金額よりも多く計上されてしまうわけですが、うっかり間違ったのか、意図的に経費を増やそうとして計上しているのかまでは調査官にはわかりませんので、調査官もわざとではないかと疑ってくる可能性があります。

いらぬ疑いをかけられないためにも、重複ミスを減らす方法として、保管する際にはバラバラにならないように注意し、売上票だけで処理をしないようにしましょう。

まとめ

実際の税務調査では、クレカの明細はあるが領収書の保存がない、という事だけで強く否認するようなことは現在のところ無いようですが、インボイス制度がスタートするにあたり、インボイスを保存しているということは非常に重要になります。

そのため、実務的にカード明細で処理しているという方は注意が必要ですし、領収書等は「捨てない」ことが重要になります。

もちろん、電子帳簿保存法がスタートすれば電子データでの保存も必要になってきます。

新しい仕組みがスタートしてすぐというと、多くの場合、世間に浸透するまでにはなかなか時間がかかるため、いきなり厳しい対応はされにくい傾向にありますが、制度スタート前からすでに税務調査での確認や指摘が増えているということは、今後はさらにインボイス関連の指摘が厳しくなると考えられますので、事前にしっかりと準備を整えておく事が重要かと思います。

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