この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
●お問い合わせは無料です。ページ下部のメールフォームよりお気軽にご相談下さい。
弊社のクライアントさんには、ブログやサイト、メルマガ等に広告を載せて収入を得られたり、YouTuberとしてアドセンス報酬を受け取られている、いわゆる「アフィリエイター」の方もたくさんおられ、ユーチューバーとして日本でトップクラスの方や、テレビやマスコミ等でも有名な方々などの顧問実績も多数ありますが、よく無料相談で多いのが、特に確定申告前に税務署へ問い合わせたところ
「アフィリエイトに経費なんてないと言われたのですが本当ですか?」
というものです。
そもそも、税務署の職員さんは税金のプロではなく、基本的に単なる公務員さんなので、回答が必ずしも正しいとは限りませんが、ケースによって経費として計上できる場合と出来ない場合があるなど、判断方法も複雑ですので、間違えて後に税務署から指摘されないよう、今回はアフィリエイトの税金の経費について解説します。
▼以下の目次の知りたい内容をクリックすることでジャンプが可能です。
アフィリエイトは何所得として申告するかで経費を引けるかが異なる?
まず、個人のアフィリエイト収入は、「事業所得」または「雑所得」として確定申告し、納税する必要があります。
ただ、どちらにするかは自由に選べるものではなく、事業所得として申告するためには、その継続性や事業規模など、社会通念上に照らし合わせて判断することとなり、控除が増えるから等の理由で決められるものではありません。
▼事業所得として申告できるか、判断基準の詳細等については以下の記事にまとめてありますのでご参照下さい。
アフィリエイトの税金や確定申告のやり方、20万円以下など申告が不要な人の条件や、会社にバレない方法、申告しないとどうなるか、実際の申告書を使った書き方等を解説します。
雑所得にも3つの分類がある?
事業所得に当てはまらない場合は「雑所得」として確定申告を行うことになります。
ただ、2020年の通達改正により、雑所得は
- 公的年金
- 業務
- その他
の3種類に区分されました。
公的年金は関係ありませんので、アフィリエイトの税金を雑所得として申告する場合は、「業務」か「その他」のどちらで申告することになりますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
「業務」にかかる雑所得の特徴とは?
「業務にかかる雑所得」として申告する場合は、経費を差し引くことが可能です。
ただし条件として、「記帳」と「帳簿の保存」が必須となります。
その為、記帳費用などがかかる場合がありますが、条件をクリアしていないと経費としては認められませんので、その場合は次の「その他」の雑所得として申告する必要があります。
「その他」の雑所得の特徴とは?
こちらは帳簿作成や記録の保存義務がなく、手続きは簡単ですが、経費として認められる範囲が非常に狭く、基本的に「直接原価」しか経費として引けませんので、アフィリエイトでは経費計上出来るものはほとんどないと考えられるでしょう。
つまり、パソコン代やアフィリエイトのセミナー代など、直接原価でないものは経費として計上できません。
尚、暗号資産(仮想通貨)取引やFX等を同時にされている方もおられるかと思いますが、それらの収入も「その他の雑所得」に該当しますので、それぞれの所得を合算して申告することになります。
所得区分の判断方法は?
以上を踏まえ、アフィリエイト収入をどの区分で申告するか迷った場合の目安として、以下の基準が参考になります。
- 将来的にアフィリエイトを本業にするつもりがない場合……「その他の雑所得」として申告
- 将来的に事業としてアフィリエイトを考えている場合……「業務にかかる雑所得」として申告
- 事業規模での運営をしており、年間300万円以上の収益がある場合……「事業所得」または法人化
これらを一つの基準として判断されるのも良いでしょう。
アフィリエイトの経費には何がある?
前章の内容を踏まえて、個人の「事業所得」、もしくは「業務にかかる雑所得」として申告する場合は、条件をクリアすることで経費を計上できますが、よくご相談をいただく中で多いのが、
「パソコン等は経費に出来るかなと思うのですが、○○についてはどうでしょう?」
という質問です。
つまり経費のなかには、イメージとして明確に経費とわかるものもあれば、経費になるのかどうか、よくわからないものもあるかと思います
(パソコンを経費として計上する場合の具体的な方法については、以下の「高額なモノを購入した場合の経費処理について」で解説いたします)。
なのでまずは、そもそも経費とはどういうものを指すのかを見ていきましょう。
他記事でも何度か取り上げていますが、所得税法を確認すると、経費とは
総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用
(所得税法第37条第1項より一部抜粋)
とあります。
要するに、アフィリエイトを行う上で直接関連のある費用=経費となります。
では、具体的にはどんなものが経費になるかというと、
●経費として考えられるもの
- ネット通信費
- 電気代
- サーバー代、ドメイン取得費用
- アフィリエイトに関する本やセミナーの参加費
- ASPから報酬が振込まれるときに差し引かれる振込手数料
- 情報収集目的のアフィリエイター同士のオフ会の会費や、そのための交通費
- 記事にするために購入した物品
個人の「事業所得」か「業務にかかる雑所得」として申告する場合は、一般的にこれらはアフィリエイトの経費として認められるでしょう。
反対に、非常にあからさまな例ですが……、実際にあった間違い例で言うと、以下のようなものはもちろん経費にはなりません。
- 事業に関係のない集まりでの飲食代
- 整体院の治療代
- 記事に直接関係しない物品の購入
これらは当然、経費として認められません。
この辺りは分かりやすいので、ほとんどの方が理解されると思うのですが、次に、間違いやすいものや、判断に困るものについて見ていきましょう。
日常生活でも利用しているものを経費として計上する方法は?
例えば、アフィリエイト専用のオフィスなどを借りている場合を除いて、自宅でアフィリエイトをされている方も多いかと思いますが、その場合には、家賃やネット通信費、電気代など日常生活でも利用しているものについては、業務とプライベートが明確に分けられているかどうかによって、経費として計上できるかどうかが違って来ます。
ちなみに、水道光熱費や通信費、家賃などを「家事関連費」と言いますが、これらは取引の記録などを元に、業務を行うために直接必要だったことが明確に分けられる時だけ、その分けられた金額だけを経費として計上できます。
▼必要経費についての詳しいルールについてはこちらをご覧下さい。
尚、平成25年10月17日判決の東京地方裁判所での裁判で、自宅家賃などの経費計上について争った裁判では、
リビングの一部を業務にだけ使用していたと主張していましたが、家族との生活が主であるリビングが、たとえ業務にしか使用していない時間があったとしても、それを明確に区分出来ているとは言えない
として否認されています。
▼家賃について争った裁判の詳細については以下の記事をご覧下さい。
弊社はIT関係やネットビジネス専門の会計事務所ですので、例えばせどりや輸出入物販、またアフィリエイトやYouTuber等をされている方からのご相談を日々いただくのですが、お客様の中には実店舗や事務所を持たず、自社サイトや …
つまり、日常生活でも利用しているものを経費として計上する場合は、客観的に見て、明らかに業務とプライベートがはっきりと分かれていると納得させられるだけの状況を、予め準備しておく必要があると言えるでしょう。
購入した物品を経費とする場合のやり方は?
これもよく相談を受ける部分なのですが、物品の購入については、まず「アフィリエイト記事などとの関連性がポイント」となります。
少し詳しく説明すると、例えばカバンを購入して、そのカバンを持った写真を単にSNSにアップしたというだけでは、経費とは考えにくいかもしれません。
アフィリエイトはあくまで広告収入を得ることが目的ですので、カバンの写真だけでは、アフィリエイトとの関連性が低いと判断されても仕方がないでしょう。
しかし、例えば見た目や使い勝手についてレビューをし、購入を誘導しているなど、アフィリエイトのために購入したということを明確に示すことで、経費と考えられる可能性は高くなります。
この辺りは、実は明確なラインがあるわけではなく、例えば税務調査が入った時に、税務署の調査官は、自分の成績を少しでも上げようと、「これは経費として認められません!」と言ってくるでしょうが、そこでどれだけお客さんのお金をお守りできるか、税理士によって税務調査対策のスキルというのは異なりますので、どの税理士に依頼をするかで大きな差が出てくる部分なのですが、
過去にアフィリエイト等のネットビジネスの税務調査でお客様を何度もお守りしてきた立場から申しますと、もしご自身で対策をされる際に重要なポイントとして、
「物品=経費 or 経費ではない」
と形式的に考えるのではなく、
- その物品が実際にどのように利用されていて
- どのようにアフィリエイトに関連しているのか
それらを考え、それを説明できるだけの客観的な資料や証拠を予め揃えておくことが、税務署から指摘をされた時の対処法となります。
なので買った時の領収書はもちろん、その経緯や販売ページ、その流れなど、資料はしっかりと残しておくようにしましょう。
高額なモノを購入した場合の経費処理について
経費を考える場合、知っておくべきこととしては、10万円以上のモノは減価償却資産となり、全額を一括で経費とすることができず、定められた耐用年数に応じて、少しずつ経費にしていくことになりますのでご注意下さい(※青色申告の場合は特例で30万円まで一括で経費にすることができますが、合計額に上限があります)。
例えば、アフィリエイトで使用するパソコンの場合で考えてみましょう。
7月に16万円でパソコンを購入したとします。
パソコンの耐用年数は4年となっていますので、4年間かけて少しずつ16万円を経費にしていくことになるのですが、1年目は丸12ヶ月ありませんので、
16万円÷4年×6ヶ月/12ヶ月=2万円
が初年度の必要経費となります。
続いて2年目は、
16万円÷4年×12ヶ月/12ヶ月=4万円
が経費となり、16万円分すべてが経費として計上されるまで、毎年少しずつ計上していくことになります。
ただし、アフィリエイト以外にも利用しているパソコンの場合には、上記、
「2.日常生活でも利用しているものを経費として計上する方法は?」
の考え方を参考に、事業に使用している割合分を計算して、それを計上するようにしましょう
(※減価償却にはいろいろな方法がありますが、ここでは単純に定額法で説明しています)。
まとめ
ここまでアフィリエイトの経費について解説してきました。
まず大前提として、令和2年以降、個人の場合は「事業所得」か「業務にかかる雑所得」以外、経費を計上することは難しくなりました。
ネット上ではまだ古い情報も残っているかと思いますが、そこは間違えないよう注意しましょう。
また今回は非常に基本的な内容についてお伝えしましたが、それだけでも「アフィリエイトに経費なんてないよ」という税務署の回答とは裏腹に、さまざまな経費を計上することができることがお分かりいただけたかと思います。
更に突っ込んだお話をすると、アフィリエイトは物販などのビジネスモデルのように原価がないため、売上規模が大きくなっても、必要経費全体の金額は大きく変わらないと思われている方も多いようですが、それは適切な節税対策が考えられていない場合の話です。
段階としては、
まず個人でされている方の場合は、必要経費を適切に計上することが節税の第一歩になりますので、
「そんなの当たり前のことでしょう」
とおっしゃる方は多いですが、実際に弊社へご相談に来られる人の資料を拝見していると、きちんと計上できている方は非常に少ないのが現状ですので、まずは仕事で使ったものはきっちりと経費に計上することが大切です。
それでも尚、税金が高いと感じられる場合には、法人を設立し、個人事業ではできない節税対策を行うことで、更に節税をすることが可能になります。
▼通常、法人化には初期費用がかかりますが、弊社では無料で会社を設立できる方法もありますので、興味のある方は以下の記事をご覧下さい。
アフィリエイトの法人化で、税金(確定申告や決算)での節税法や目安、失敗しないポイントの他、無料で会社を設立する方法などについて解説しています。
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