消費税還付

この記事を書かせていただいているのは令和4年の夏ですが、春頃からの円安等で、日常的にも物価上昇の影響を受けている方も多いかと思います。

一方で、日本で仕入れて海外のAmazonやeBayなどのECサイトで販売するといった「輸出転売」をされている方達の中には、逆に円安により売上を伸ばしているという方も多いのではないでしょうか。

このような海外物販をされている方が考慮すべきポイントとして、売上が増えることで納める所得税や法人税が上がるということもありますが、実は「消費税の還付」についても重要になってきます。

実は、令和4年1月21日に国税庁が「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」という1枚のPDFを発表しました。

一言で言うと、「消費税還付の調査にさらに力を入れますよ」というお知らせです。

これまでも、税金を納める申告時より、税金を返してもらう(還付する)申告は、税務調査に発展しやすいと言われていまして、実地調査に至らなくとも電話での聞き取りや追加書類の提出を求められるといった事がよくあります。

弊社でも(割合から言いますと何も無いことが多いのですが)電話でのお尋ねがあった事が何回もありましたし、お尋ね自体そこまで珍しい話では無いものの、こういったところも厳しくなると考えられます。

例えば厳格な審査が行われることによって、還付が保留される期間が長くなった場合は、なかなか消費税が還付されないという事になり、そうなると資金繰りが変わってくる可能性も出て来るでしょう。

ただ、一定の要件を満たして正しく申告していれば、本来は通常通り消費税の還付を受ける事ができる有効な制度ですので、海外取引されている事業者の方が、消費税還付制度を利用してビジネスを有利に進めていただけるよう、今回は基本的なことから解説致します。

 

海外輸出時の消費税還付の仕組みとは?

まずは簡単に消費税の還付についてご説明します。

消費税は、消費者から預かった消費税から、仕入れの際に支払った消費税を差し引いた、残りの消費税を国に納めます。

例えば、100円(税込110円)で仕入れたものを200円(税込220円)で売るとします。

この場合の消費税は、20円預かっていますが、すでに10円支払っていますので、差し引いて残りの10円を納めるという事になります。

20円 – 10円 = 10円

これが海外のAmazonやeBay、PayPalなどで販売した場合は、消費者から消費税は預かっていませんので、仕入れの際に支払った消費税の方が多くなります。

先程の例で言いますと、100円(税込110円)で仕入れたものを200円で売ることになり、この場合の消費税は、1円も預かっていませんが、すでに10円支払っているため、この10円は返してもらう事ができるということです。

0円 – 10円 = △10円

このように支払いすぎた消費税を、申告して返してもらうことを消費税の還付申告と言います。

なお、海外取引をしている事業者だけでなく、高額な設備投資を行った場合なども還付申告を行うことで消費税が還付されるような仕組みになっています。

取引額が大きくなればなるほど見過ごせない金額になりますので、該当する方はこの制度を正しく利用していただければと思います。

消費税の還付が受けられる人は?

ちなみに、消費税の還付が受けられるのは、消費税の課税事業者で且つ消費税の計算方法を原則(一般課税)で行う事業者だけです。

免税事業者の方や、課税事業者でも簡易課税制度を選択している場合はこの還付制度は利用できません。

そのため、弊社のクライアント様の中には免税事業者だけど、あえて課税事業者になり還付を受けている事業者の方もおられます。

尚、具体的な消費税還付申告のやり方や注意点については、以下の記事をご参照下さい。

関連記事>>>『プロが教える!輸入転売や輸出の消費税還付のやり方と注意点とは?』

なぜ今、消費税の還付が更に厳しくなるの?

冒頭で、「税金を返してもらう(還付する)申告は税務調査に発展しやすい」と書かせていただきましたが、更に厳しくなる原因の一つに「消費税の不正還付への対応」もあります。

還付申告を行う際に、もちろん人間ですので処理や判断を誤ってしまうといったことも考えられますが、これが本当に過失なのか故意なのかは確認してみないとわかりませんので、今までからも消費税の還付というのは税務調査になりやすい内容ではありました。

しかし、制度の仕組み上、還付されないケースなのに、意図的に還付されるような申告書を作成し、不正に消費税の還付を受けるといった悪質なケースが後を絶たないと言われています。

消費税の不正還付は悪質性が高く、国庫金の搾取とも言えるため国税当局はこれまでも厳正な調査を行ってきました。

令和元年10月からの消費税が10%に引き上げられた事で、還付申告をする法人が増加することや、輸出免税取引を悪用した不正還付事案が増えることも懸念されていて、消費税の不正還付に特化した「消費税専門官」が全国の主要税務署に新設され、対応強化に乗り出すことになったということなのです。

消費税について専門に調べる調査官がいる?

実は、税務調査を行う調査官の中には一部の分野に特化した専門の調査官がいます。

例えば、過去にも何度か当ブログで解説しましたが、「情報技術専門官」というIT分野を重点的に受講した調査官がいるのですが、ネット取引から無申告者や過少申告者を摘発していくだけでなく、ネットビジネスの調査では調査官に同行して実地調査にあたるケースもよくあります。

このような一部の分野に特化した専門官として、消費税還付の調査において「消費税専門官」が新設され、主要な税務署に配置されます。

ちなみにどんな事を行うかと言うと、例えばこれまでの税務調査では、法人税と消費税を一体的に調査していましたが、消費税専門官が加わることで、対象法人の還付申告の内容チェックを行います。

取引が複雑化しやすい法人の調査に対して長期的・集中的に調査を行うことで、不正還付スキームの実態を解明し、他の調査等にも役立てられる体制を整えるというのが主な役割になると言われています。

消費税の還付申告における審査の流れについて

還付申告が税務調査になりやすいという情報はわかりましたが、実際に還付申告を行った場合、どのような流れで審査をされるのかを見ていきたいと思います。

まず最初に、申告内容に応じて還付を保留し、還付が適切かについて審査されます。

簡単に言いますと、還付しても良いよという申告書と、これはちょっと調べる必要があるよねという申告書(還付保留)に分けられるということです。

そして税務署の内部事務担当者が、そのちょっと調べる必要があるとされた申告書について「還付保留の理由」や「還付金額」などに関する形式的審査を行います。

この形式的審査によってさらにふるいにかけられ、重点的に審査をするため調査部門に引き継ぐものと、還付の保留を解除するものに分けられます。

具体的に、形式的審査の項目は約20項目あると言われていて、1つでも該当するものがあれば、調査部門に引き継ぐ事案として処理され、基本的に該当するものがゼロにならなければ保留は解除されませんので、かなり厳格な審査と言えるでしょう。

また該当した項目によって、行政指導(確認の電話や追加書類の提出依頼など)や、税務調査での対応に分かれますが、重要なのは、ここではまだ還付は保留されたままですので、取引実態の確認に時間がかかったりすると、それだけ還付されるのが先送りされてしまうということです。

消費税申告の具体的な審査内容は?

前項でかなり厳しく見られると書かせていただきましたが、では具体的にはどのようなポイントがあるのでしょうか。

主な内容をざっくり紹介しますと

  • 法人税(所得税)の申告書の売上と、消費税の申告書の課税売上に乖離がないか?
  • 国内課税仕入や輸出免税売上の架空計上がないか?
  • 国内課税売上を輸出免税売上として仮想計上していないか?

などです。

またこれ以外にも税務署は、不正還付を起こすんじゃないかという事業者をリスト化していますので、そのリストに入っている事業者の消費税の申告書が調査部門に引き継がれると、先程のチェック項目の該当性の有無にかかわらず、実地調査が検討されると言われています。

明言はされていませんが、インボイス制度の導入で、適格請求書等の扱いについてもしっかり見られることになるでしょう。

消費税還付の時期はビジネスにとって重要?

消費税の還付は、還付申告を行ってから実際に還付されるまでの間に、申告書の記載内容や添付書類などの審査を税務署側が行うため、「おおむね1ヶ月から1ヶ月半かかる」と、国税庁ホームページの「確定申告時期に多いお問い合わせ事項Q&A」に書かれています。

法人であっても同じような運用かとは思いますが、実際の所、弊社が聞いている情報では、還付までに半年から1年以上かかっているケースも少なくないということですので、還付額が大きい方にとっては資金繰りへの影響が大きくなる可能性もあるでしょう。

ちなみに弊社は、できるだけ早く還付されるように申告するノウハウを持っておりますので、予め準備して申告を行っているのですが、クライアント様から

「友達の会社はまだ還付されていないのに、私の会社は早々に還付されて資金繰りが楽になり助かりました!」

というお声を頂戴することもあります。

商売にはタイミングがありますので、売れる時期にお金があって大量に仕入れて売ることができるのと、売れる時期にお金が無く仕入れることが出来ずにチャンスを逃してしまうのとでは雲泥の差があるでしょう。

なので、弊社のクライアント様の中には、還付額が大きいため本来は年に一回行う消費税の還付申告を、あえて3ヶ月毎に行われている方もおられるほどです。

まとめ

今回は国税庁が、消費税の還付申告に対してさらに厳しくするという公表をしたという話から、その審査の流れや具体的なチェック内容について解説致しました。

消費税還付のためだけにわざわざ専門部隊ができたということは、この不正還付の対応にかなり力を入れている事がわかります。

人間ですので処理を誤ることもあるでしょうが、出来るだけ還付を保留される期間を短くできるよう適切に申告する事で、一日でも早く還付されれば、次のビジネスに繋げやすくなるかと思いますので、該当される方は疑われるようなところがないか確認の上、利用していただければと思います。

余談ですが、上記でお伝えしたように、弊社では適正に申告し出来るだけ早く還付されるようなノウハウは持っておりますが、本来還付できないものを無理に還付されるよう申告するノウハウ(不正還付スキーム)はありませんし、仮に知っていたとしても行いません。

尚、インターネット上の節税スキームと呼ばれるものの中には、もはや脱税では?と思うようなものも多く存在しますので、いい加減な情報に惑わされて税務署から指摘され、逆に損をすることがないよう情報源には充分にお気をつけください。

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