この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
●お問い合わせは無料です。ページ下部のメールフォームよりお気軽にご相談下さい。
弊社は、アフィリエイトやせどり、オークションや転売ビジネスなどの物販、ユーチューバーやSE、プログラマーやデザイナーの方など、IT関係やネットビジネスをされている方に特化した会計会社ですので、それらの税金に関するお問い合わせが、日々全国より寄せられます。
確定申告に関するお問い合わせも多くありますが、中には、例えばせどりをされていて、メルカリなどのフリマアプリを使って売買したものの、税金のことはよくわからないからと、そのまま無申告でいたたところ、税務署から所得に関するお尋ねが来て、初めて弊社へご相談されるようなケースも少なくありません。
近年はビジネスの実態が大きく変化し、インターネットを利用した電子商取引が多く行われるようになりました。
出版物や動画などのデジタルコンテンツ配信の他、従来では見られなかった多様な取引が可能になったことで、カーシェアや民泊などをはじめとした、個人が行うシェアリングビジネスや暗号資産(仮想通貨)の取引も年々増加しています。
それらを活用することで、素人でも簡単に収入を得られることが可能になった反面、注意しておかないといけないのは、こういった取引はオンライン上で行われているため、国際的な取引が容易であったり、また取引の実態が一見わかりにくいことや、申告に馴染みのない人の参入も増えていることから、国税庁としても、正しく申告をしていない納税者を見過ごさないよう注視しています。
実際、インターネット取引等を対象に、国税庁が初めて重点調査をしたところ、2020年6月末までの1年間で、全国で174億円の申告漏れが発覚し、約39億円を追徴課税したという結果が出ています。
つまり、これまでも当ブログやメルマガで何度もお伝えしてきましたが、ネット上のビジネスは、税務署から非常に狙われやすいということです。
では、具体的に国税庁はどういったところに目を光らせているのか?もし税務調査になった場合、どういうことが問題になっているのかなど、それらについて解説してみましょう。
関連記事>>>『せどりやアフィリエイトなどIT関係の税務調査の全貌を税理士が解説』
国税庁が重点調査しているのはどんな分野?
冒頭でも少し触れた通り、国税庁がインターネット取引等に目を光らせているのはもちろんですが、具体的にいうと「新分野」と言われるビジネスへの調査にも力を入れています。
国税庁が目を光らせている新分野とは?
新分野とは、いわゆるネット通販やネットオークション、アフィリエイト、暗号資産(仮想通貨)等のネットトレード、シェアリングビジネスなどを指します。
中でも「シェアリングエコノミー」や「ギグエコノミー」は、モノや空間、スキル(人)など、インターネット上のプラットフォームを介して、個人間でシェア(賃貸や売買、提供)をしていく新たらしい経済の動きの事を指し、近年特に急成長をしてきています。
例えば、乗り物のシェアをする『タイムズカープラズ』、レンタルウェアの『airCloset』、スキルを生かして好きな時間に働ける『クラウドワークス』や『ココナラ』、フリマアプリでは『メルカリ』や『ラクマ』、クラウドファンディングでは『マクアケ』など、ここで挙げたのはホンの一例ですが、他にも様々な内容のサービスがあります。
ご存知の方やよく利用されている方も多いかもしれませんが、これが税金の話となりますと、依然として「ネット上の事だからバレないだろう……」と間違った認識をされている方がまだ多くおられるようです。
しかし、国税庁はこういった分野に対して、重点調査をするような動きを取っていますので、むしろバレる可能性の方が高いと言っても過言ではないのです。
国税庁は情報収集を進めている!
国税庁は先ほど挙げた分野に対して、適正な申告のための情報収集に力を入れていて、課税上問題がありそうな納税者を把握することで、正しい課税の確保に向けて既に動き出しています。
これは日本に限った話ではなく、他の国でも課題になっていて、OECD(経済協力開発機構)の税務長官会議(FTA)では、税務に関する各国の情報共有を行うべく、国税庁も積極的に参加しています。
そのような動きから、これらの取り組みについて、国税庁の重点課題としてその内容を公表することになったというわけです。
では具体的にどの様に情報を収集しているのでしょうか。
プロジェクトチームを全国税局に設置している!
それらの情報収集や分析を行うプロジェクトチームを、実は全ての国税局に既に設置しており、インターネット上からの情報収集だけでなく、次にお話する法的な枠組みも利用することで、非公開の情報も収集しているといいます。
その結果、それぞれの情報を組み合わせて、課税上の問題がありそうな納税者をより的確に把握することができるといわれています。
法的枠組みの積極活用とは?
今までは何か不審な点があった場合、事業者に対して任意の協力要請でしたが、実はこの協力要請についても法律が整備されました。
これにより、暗号資産やインターネットビジネスの事業者の中でも、情報提供の協力をしない業者に対して「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」を課すことが出来るようになったのです。
要請があれば、サービスを提供しているプラットフォーマー企業は「情報を開示する」以外に選択肢が無いような状況ですので、例えば『ヤフオク』や『メルカリ』、『Amazon』など、どこかのプラットフォームを利用している時点で、情報はすでに把握されていると考えておくべきでしょう。
ICTの積極活用を行う!
適切な納税を推進していくために、新たな情報通信技術の活用だけでなく、デジタルテクノロジーに精通した人材の育成や登用も進めると国税庁は発表しています。
これらの取り組みにより、得た大量の情報を有効に活用するためのシステムの整備などにも取り組むことで、情報分析の充実を図っていくとされています。
デジタル・フォレンジックとは?
更に具体的な話をすると、ICTの活用の一環として「デジタル・フォレンジック」を活用し、証拠隠しにも対応すると発表されています。
「デジタル・フォレンジック」のフォレンジックは直訳で「法定の」「法医学」などを指し、犯罪の法的証拠を見つけるための分析や鑑識のことを意味します。
ちなみに日本で「デジタル・フォレンジック」が注目されたのは2006年の『ライブドア事件』です。
警察が関係者から押収したパソコンから電子メールやファイルを復元して法的証拠として活用した事により、結果として有罪判決が出された事で、「デジタル・フォレンジック」というものが知られる大きなきっかけとなりました。
分かりやすく言うと、高視聴率だったドラマ『半沢直樹』でも、片岡愛之助さん演じる黒崎が、シュレッダーの紙を復元させて証拠にする場面がありましたが、これをコンピューター内で行うイメージです。
最近では企業内でもデジタルデータを扱うことが多くなったことで、一般の調査にも利用されるようになりました。
納税者への対応は悪質かどうかで変わる?
上記のような方法で集めた情報によって、納税者に対する対応は大きく分けると2パターンあります。
- 自発的な申告・納税を呼びかける必要がある場合は「行政指導の実施」
- 大口・悪質な申告漏れが見込まれる場合は「厳正な調査の実施」
行政指導の実施とは何をするの?
ではまず1の行政指導の実施ですが、主に取引の有無や内容を確認する「お尋ね」があります(弊社に寄せられるご相談を伺っていると、封書で届く場合が多いようです)。
これにより、自主的な申告内容の見直しや申告の必要性の確認をすることになります。
厳正な調査の実施は何をする?
次に2つ目の「厳正な調査の実施」ですが、こちらは「お尋ね」という優しいことではなく、「厳正な調査」になります。
基本的に、インターネット上でシステムやサービスを提供しているプラットフォーマー企業(例えばメルカリだとか、仮想通貨の交換所だとか)に対して、既に反面調査や情報提供要請を行っており、証拠収集や事実認定をした上での調査となります。
外国当局への情報提供要請も可能ですので「海外だからバレない」というのも、もはや通用しないと思っておくべきでしょう。
ネットビジネスの具体的な調査事例について
日頃から確定申告が必要だということを周知してもらうための取り組みとして、プラットフォーマーから利用者に対して、それらの呼びかけも行われているかと思いますが、それでも無申告や申告漏れがあった場合は調査をする形となります。
ここで、実際に発表されている調査事例をご紹介しておきましょう。
動画配信者に対する調査事例について
調査対象者は、動画配信事業者を通じて動画配信を⾏っている。
動画の視聴者は、動画配信事業者からポイントを購⼊し、気に⼊った動画配信者にプレゼントすることができる。
動画配信者は、視聴者からプレゼントされたポイントを動画配信事業者を通じて換⾦することができるところ、調査対象者のプレゼントされたポイントの総額が申告額を⼤幅に上回ることが想定されたため、調査を実施した。
調査の結果、視聴者からプレゼントされたポイントのうち、換⾦していないものについて申告していないことが判明した。
引用元:国税庁「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」
インターネット上のプラットフォーマーを介した売買に対する調査事例
調査対象者については、チケット転売サイトで購⼊したチケットを、ネットオークションに出品・売却することで、多額の利益を得ていることが想定されたため、調査を実施した。
調査の結果、オークションサイトのID登録のほか、決済⼝座も親族名義を利⽤することで、自分の名前が一切表面に出ないよう画策し、申告義務を逃れていたことが判明した。
引用元:国税庁「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」
アフィリエイターに対する調査事例
調査対象者については、ASP(Affiliate Service Provider)を通じて、多額のアフィリエイト報酬を得ていることが想定されたため、調査を実施した。
調査の結果、アフィリエイトで稼いだ利益について申告をしていないことが判明した。
※ASPは、広告を掲載してもらいたい広告主(A社)と広告を掲載したいアフィリエイター(調査対象者)を仲介する役割を担う業者。
引用元:国税庁「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」
まとめ
恐らく、多くの無申告や申告漏れの方は「バレないから大丈夫」、もしくは「少々なら申告しなくても問題ないだろう」という勘違いから、申告されていない可能性が高いのではないかと思われます。
中には、用意周到に他人の口座やアカウントを使い、自分の名前が表に出ないようにしているケースも有るようですが、結果としては上記の調査事例のように、申告をしていない事実がバレています。
これまでお尋ねも調査も来てないから大丈夫だと思っておられる方も、ただ単に泳がされているだけの可能性が多いにありますので、何も言われていないからバレていないとは残念ながら言えません(通常、税務署は数年分まとめて来ることが多々あります)。
もし少しでも心当たりのある方は、今からでも認識に間違いがないかの確認をし、必要であれば今からでも自主的に申告をする(し直す)ことで、ペナルティの中でも「過少申告加算税」の10%については、税務署から指摘される前の申告であれば課税されなくなります。
指摘された後ではそれもかかってきますので、出来るだけ早く対応されることをお勧めします。
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