インフルエンサーへの源泉徴収

最近ではスマホの普及率も高まり、ある調査では携帯保有者の実に95%以上がスマホだとのことですが、そんな背景もあって、最近では企業もYouTubeやTikTok、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを利用して商品やサービスをPRする、いわゆる「案件」や「インフルエンサーマーケティング」が増えています。

なので投稿の中に「#PR」や、「プロモーションが含まれています」といった文言を見たことがある方も多いでしょう。

その際、企業からインフルエンサーへ報酬を支払うことになるかと思いますが、実は源泉徴収についても確認をしておく必要があります。

ちなみにインフルエンサーマーケティングと言っても、ご自身がインフルエンサーの場合もあれば、逆にインスタグラマーなどのインフルエンサーに依頼する側のケースも考えられると思いますが、どちらの立場にせよ、このインフルエンサーに支払う報酬が、源泉徴収の対象になるのかどうかによって税金の対応が変わってきます。

重要なポイントとして、所得税法上、インフルエンサーに支払う報酬が源泉徴収の対象になるかどうかについては、実態に基づき判断することになりますので、同じ「インフルエンサーに支払う報酬」という名目であっても、その内容によって判断が異なる可能性があります。

今回は、そんなインフルエンサーに支払う報酬の中でも、「自社の商品をインフルエンサーに無料提供して、その感想などを、主にInstagramなどのSNSやブログに投稿・発信してもらう対価として報酬を支払うケース」について、源泉徴収が必要なのかどうかを順に解説していきたいと思います。

 

そもそも源泉徴収とは?

まず最初に源泉徴収の解説をいたしますと、一般的なサラリーマンの方の場合、給与の支給額から諸々差し引かれた残りの金額(いわゆる手取り額)を受け取られているケースがほとんどかと思います。

この諸々差し引かれる中に、所得税(源泉所得税)があるのですが、支払う側がこの源泉所得税を差し引くことを「源泉徴収」と言います。

お給料だけに限らず、源泉徴収の対象になる報酬等を支払う場合、報酬を支払う側は源泉徴収を行う義務が発生し、源泉徴収した税金を納めなければなりません。

そのため、インフルエンサーに支払う報酬が、源泉徴収の対象になるかどうかで、源泉徴収を行う義務が発生するのかしないのか、そしてもし源泉徴収を行う必要がある場合は、それを納める義務も発生しますので、必ず事前に確認しておくべき事項となります。

それを踏まえて、次に源泉徴収の対象になる所得を見ていきましょう。

源泉徴収の対象となるものとは?

まず初めに個人と法人で源泉徴収の対象となる範囲が異なりますので、国税庁のサイトに記載されている例を見てみましょう。

▼個人の場合

  1. 原稿料や講演料など。ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています
  2. 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  5. 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  6. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

▼法人の場合

  1. 馬主である法人に支払う競馬の賞金

引用元:国税庁 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは 一部抜粋

 

当然のことながら、税法の条文の中に「インフルエンサーのSNS投稿に関する報酬は源泉徴収されます」とは書かれていませんので、このような対象になる項目の中から、実態としてどの項目が当てはまりそうかを見ていくことになります。

YouTuberやインスタグラマーなどインフルエンサーへの報酬は原稿料に該当する?

インスタグラマーやブロガーなどのインフルエンサーは、SNSに投稿する際、例えば企業から提供されたものがお菓子であれば、それを食べた感想などを伝えるために文章等のコンテンツを作成するかと思います。

では文章を作成するのであれば、源泉徴収の対象になる「原稿料」に該当するのでしょうか。

一般的な流れで言うと原稿料は、執筆者から出版社などに寄稿された原稿への対価として支払われるもので、その原稿内容は出版社などが書籍等として販売することになります。

対するInstagramerなどのインフルエンサーの場合は、SNSにコンテンツを投稿し、その対価として報酬を得ますので、企業へ文章等を提出するといった流れには該当しません。

このように、文章等を作成するという部分では行っていることは同じように見えますが、企業側が文章等を受領したという事実に基づかないため、源泉徴収の対象となる「原稿料」には該当しないと考えられます。

広告宣伝のための賞金に該当するか?

次にインフルエンサーに支払う報酬は「広告宣伝のための賞金」に該当するか、ですが、結論から申しますと、こちらも該当しないと考えます。

なぜなら、源泉徴収の対象になっているのは「広告宣伝のための賞金」であって、賞金品に限定されているからです。

インフルエンサーに支払う報酬は、広告宣伝のためと言えるかと思いますが、賞金として支払われるわけではないと思いますので、インフルエンサーに支払う報酬は該当しないと考えます。

モデルに対する報酬に該当するか?

インスタグラマーやブロガーなどのインフルエンサーがSNSに投稿する際、自身の写真と一緒に投稿することもあるかと思いますが、この場合「モデルに対する報酬」に該当するのでしょうか。

所得税法をもう少し詳しく見ていきますと、

モデルには、雑誌、広告その他の印刷物にその容姿を掲載させて報酬を受ける者を含むものとする。

引用元:所得税法施行令第320条③ 一部抜粋

つまり、印刷物に容姿が掲載されるケースが対象となっています。

そのため、インフルエンサーがSNSに自身の姿を投稿したとしても、源泉徴収の対象にはならないと考えます。

要はインフルエンサーに依頼する内容による?

ここまでは「自社の商品をインフルエンサーに無料提供して、その感想などをSNSに投稿・発信してもらう対価として報酬を支払うケース」で検討しました。

これがもし、インフルエンサーに自社の新商品のデザインを依頼したというケースであれば、源泉徴収の対象になる、1)原稿料や講演料などの項目に該当すると考えられます。

もう少しこの項目を詳しく見てみますと

一 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金

引用元:所得税法 第204条 源泉徴収義務

となっていて、デザインに対する報酬は源泉徴収の対象になります。

このように、インフルエンサーに支払う報酬という名目であっても、何を依頼するのかによって源泉徴収の有無は変わってしまうのです。

源泉所得税を納付しなかった時のペナルティは厳しい?

ここまでは徴収の有無について見てきましたが、徴収した源泉所得税は期限内に納めないとどうなるのかについても見ておきましょう。

実は源泉徴収した所得税は、預かったものを代わりに納付するというものになりますので、所得税や法人税と比べると罰則が厳しくなっています。

その罰則ですが、納付期限を1日でも過ぎると、本来納めるべき税金に対して不納付加算税が10%加算されます。

つまり、1日でも遅れたら納付額(本税)が100万円だった場合10万円の損失がついてくる事になるのです。

場合によっては延滞税も加算されますので、期限内に支払っておかないと更に損失が膨らみます。

もし、指摘を受ける前に自主的に納付していれば10%のところが5%となりますが、それでも100万円で良いところを105万円と5万円も余分に払うことになるのですから、非常に無駄な出費ですし、もちろん経費にはなりません。
(ただし、期限までに納付できない、やむを得ない理由がある場合には免除されます。)

関連記事>>>【危険!延滞税や無申告加算税などペナルティの税金の種類と内容とは?】

まとめ

今回ご紹介させていただいた「自社の商品をインフルエンサーに無料提供して、その感想などをSNSに投稿・発信してもらう対価として報酬を支払うケース」であれば、基本的に源泉徴収が必要な項目のどれにも当てはまらないため源泉徴収は不要と考えられるでしょう。

しかし、依頼内容によっては検討する内容が変わりますので、今後の改正も含め注意して見ていく必要があると言えます。

また、報酬を受け取ったインフルエンサーは、原則確定申告が必要になるかと思いますので、請求書や支払明細など、報酬を受け取った根拠になる資料はしっかり残しておくようにしましょう。

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