消費税

ネットビジネスを行っていて売上が一定額を超えるようになると、所得税の確定申告の他に、消費税の申告や納税が必要になってきます。

また、せどりや輸入転売ビジネスで、海外との取引を行っている方の場合は、消費税を還付してもらう(払いすぎた分を返してもらう)といった手続きをされるケースもあるでしょう。

ただこの消費税というのはなかなか奥が深く、これまで何度も立ち合わせていただいているネットビジネスの税務調査でも、よく争点になる部分でもあり、事前に知っているかどうかで、課税の結果が大きく変わってくる部分でもありますので、今回は消費税の申告書の書き方について、実際の申告書を見ながら順を追って解説していきましょう。

ちなみに、消費税の納付が免除になる条件や簡易課税、還付などについては以下にまとめてありますので、あわせてご覧下さい。

関連記事>>>『ネットビジネスの消費税計算、簡易課税、還付について税理士が解説!』

 

消費税の中間申告(中間納付)とは?

まず、具体的な計算方法や記入の仕方を解説する前に、消費税の納税方法についてですが、前年の消費税の納税額に応じて、中間申告をしなければならないケースがあります。

その3つの内容について見ていきましょう。

  1. 前年度の確定消費税額が48万円超400万円以下の場合
    → 年に1回の申告……中間申告の期間は年度開始から6ヶ月毎で、前年確定年税額の1/2となります。
  2. 前年度確定消費税額が400万円超4,800万円以下の場合
    → 年に3回の申告……中間申告の期間は年度開始から3ヶ月毎となり、前年確定年税額の1/4となります。
  3. 前年度確定消費税額が4,800万円超の場合
    → 年11回の申告……中間申告の期間は年度開始から1ヶ月毎となり、前年確定年税額の1/12となります。

上記のように、前年度の確定消費税額に基づいて、中間申告の回数が変わってくるわけですが、それが48万円以下の場合は、中間申告をする必要はありません。

また任意で中間申告をすることも可能で、その場合は2.の「前年度確定消費税額が400万円超4,800万円以下の場合」と同じ内容になります。

消費税の基本的な計算方法について

次に、基本的な計算式についてですが、消費税の原則的な計算方法を式で表すと、

(売上高×8%)-(仕入高×8%)=消費税額

となります。

計算式だけを見ると、一見簡単に計算できそうな気がしますが、まず理解しておく必要があるポイントとして、消費税の世界の売上高と仕入高は少し特別で、簿記や所得税、法人税の世界で言う売上高や仕入高より、ずっと範囲が広いということがあげられます。

そのため、実際にはこの売上高と仕入高を集計する作業に、手間が非常にかかります。

例えば「仕入高」というと、仕入原価を想像される方が多いと思いますけれど、消費税でいう仕入高は、仕入原価はもとより、外注費や消耗品費など、販売費・一般管理費の中にも仕入れになるものがたくさんあります。

さらには、減価償却で少しずつ経費にしていくようなものも、消費税には減価償却という概念がないため、購入した年度で全額が仕入になってきます。

そのため、まず最初に行う手順としては「消費税法上の売上高と仕入高になるものを、より分けていく作業が必要だ」ということを覚えておいて下さい。

消費税の対象となる取引とならない取引が存在する!?

売上と仕入の集計が終わったら、次は各勘定科目の内容をみて、消費税の課税対象になるものとそうでないものに分解していくことになります。

※これは、税込経理をしている場合を前提に説明しています。ちなみに、税込経理とは、取引金額をすべて税込金額で仕訳し、消費税分を区分経理しない方法で、税抜経理とは、消費税分を仮受消費税と仮払消費税に区分経理する方法です。

  1. 消費税の課税対象となるものを「課税」
  2. 消費税の課税対象から外れているものを「不課税(対象外)」
  3. 本来は消費税の課税対象だけれども、課税の対象になじまなかったり、政策的な意味合いで消費税を課さないものを「非課税」

として、それぞれの勘定科目を分解していきます。

ちなみに、非課税となるものの代表的な例としては、利息や保険料の支払い、地代などがあり、不課税(対象外)の代表的な例としては、人件費や法定福利費、配当金などがあります。

それぞれの勘定科目を分解し、「課税」「非課税」「不課税(対象外)」それぞれの売上高と仕入高を集計すれば、申告書を書く準備は完了です。

消費税の確定申告書の記入方法(一般課税と簡易課税)

準備が出来たら、次はいよいよ申告書を書いていく段階に移ります。

消費税の申告書には「一般用」と「簡易課税用」の2種類がありますが、どちらも1枚だけで見た目も似ていますので、自分が原則課税なのか簡易課税なのかをしっかりと把握し、間違えないように注意しましょう。

見分け方のコツとしては、簡易課税用の申告書には、右上にピンク字で「マル簡」と記載されています。

▼消費税申告書(一般用)

消費税申告書(一般用)

▼消費税申告書(簡易課税用)消費税申告書(簡易課税用)

申告書を用意したらいよいよ作成に入りますが、今回は集計した金額が以下の金額という形で作成していきたいと思います。

  • 課税売上高:20,000,000円
  • 課税仕入高:12,000,000円
  • 業種:サービス業
  • 税込経理で処理しているものとする
  • 今期の中間納付はないものとする

消費税申告書(一般用)の場合

では実際の申告書の欄と照らし合わせながら、上記の金額例を元に、記入する内容を解説をしていきます。

(1)課税標準額

課税標準額とは、税率を掛ける前の税金を計算する上で基となる金額のことです。

ここでは、課税売上高から消費税8%分を控除した金額になります。なお、千円未満は切り捨てです。

20,000,000円×100/108=18,518,000円

(2)消費税額

ここでは、売上金額に含まれる消費税額を計算するため、(1)課税標準額に6.3%を掛けます。

なお、消費税には国税部分と地方税部分があり、8%の内訳は、国税部分6.3%、地方税部分1.7%となります。

(2)の消費税額欄は国税部分の計算ですので、8%を掛けないように注意しましょう。

18,518,000円×6.3/100=1,166,634円

(4)控除対象仕入税額

ここでは、課税仕入高に含まれる消費税額を計算します。ここも国税部分の計算であることに注意しましょう。

12,000,000円×6.3/108=700,000円

(7)控除税額小計

ここは「(4)控除対象仕入税額」+「(5)返還等対価に係る税額」+「(6)貸倒れに係る税額」ですので、700,000円となります。

(9)差引税額
(11)納付税額
(18)差引税額

この3箇所には、課税売上高に含まれる消費税額から控除対象仕入税額を差し引き、百円未満を切り捨てた金額を記載します。

1,166,634円-700,000円=466,600円

(15)課税資産の譲渡等の対価の額
(16)資産の譲渡等の対価の額

ここでは、千円未満を切り捨てる前の課税標準額を記載します。

20,000,000円×100/108=18,518,518円

(20)納税額
(22)納付譲渡割額

ここはでは、消費税の地方税部分を計算することになります。

国税部分6.3%、地方税部分1.7%ですので、以下の算式で地方税部分を求めることができます。ちなみに百円未満は切り捨てです。

466,600円×1.7/6.3=125,900円

(26)消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額

ここでは、その名の通り、国税部分と地方税部分の合計額を記載します。

466,600円+125,900円=592,500円

これで申告書は完成です。

消費税申告書(簡易課税用)の場合

(1)課税標準額と(2)消費税額については、一般用と同じですので、上記「消費税申告書(一般用)の場合」をご参照ください。

(1)=18,518,000円
(2)=1,166,634円

(4)控除対象仕入税額

(2)の消費税額にみなし仕入率を掛けた金額を記載します。

サービス業は第五種事業ですので、みなし仕入率は50%となります。

なお、みなし仕入率については、関連記事をご参照ください。

1,166,634円×0.5=583,317円

関連記事>>>『ネットビジネスの消費税計算、簡易課税、還付について税理士が解説!』

(7)控除税額小計

ここも一般用と同様に「(4)控除対象仕入税額」+「(5)返還等対価に係る税額」+「(6)貸倒れに係る税額」となりますので、583,317円となります。

(9)差引税額
(11)納付税額
(18)差引税額

この3箇所も一般用と同様に、課税売上高に含まれる消費税額から控除対象仕入税額を差し引き、百円未満を切り捨てた金額を記載します。

1,166,634円-583,317円=583,300円

(15)この課税期間の課税売上高

事前に集計した条件より、この決算期の課税売上高を税抜金額で記載します。

20,000,000円×100/108=18,518,518円

(16)基準期間の課税売上高

今回は前提条件として設定していませんが、基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高を税抜金額で記載します。

(20)納税額
(22)納付譲渡割額

ここも一般用と同様に、消費税の地方税部分を計算することになります。

583,300円×1.7/6.3=157,300円

(26)消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額

ここでは、その名の通り、国税部分と地方税部分の合計額を記載します。

583,300円+157,300円=740,600円

これで申告書は完成です。

まとめ:消費税の申告は複雑なのでペナルティーを受けないよう事前に注意が必要!

今回は、消費税の確定申告のやり方について、実際の納付書をベースに、大まかな書き方の流れを説明させていただきました。

実際には、申告書以外にも控除対象仕入税額を計算するための付表を作成したり、原則課税であれば課税売上割合(課税売上と非課税売上の合計額に占める課税売上の割合)によって、簡易課税であれば複数の事業区分(第一種事業~第六種事業)を行っているなどといった場合には、さらに複雑な計算をしなければなりません。

さらには、消費税額に比べ控除対象仕入税額の方が多い場合には、消費税が還付されることとなる場合もあります(還付申告をする場合には、「消費税の還付申告に関する明細書」も添付しなければなりません(以下の画像は「法人用」のもので「個人事業者用」は別にあります))。

還付明細1

還付明細2

ただ、消費税法というのは実は非常に複雑な税法で、弊社の無料相談会に来られた方のお話を伺っていると

『他の税理士さんにネットビジネスの消費税の申告をお願いしたら、「消費税は専門のところへ依頼して下さい……」と断られました』

といったケースもありましたが、それだけプロでも難しいものです。

他にもご自身で消費税の申告書を作成して提出したところ、後に税務署から指摘をされて、結局、弊社がやり直しをさせて頂いたというケースもありますので、実際に申告をされる場合は、後からペナルティーを課せられていては意味がありませんので、弊社に限らず、消費税の申告や、税務調査で指摘された時の対処に強い税理士等へ、一度相談されてから行われることをお勧めします。

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