この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
これまで有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
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確定申告の時期が迫ってくると、無料相談会やメールでのお問い合わせでも
「フリーランスで仕事をしているんですが、どんなものが経費になりますか?」
「経費の割合はどれぐらいまで認められるんでしょうか?」
といったご相談がよく寄せられます。
ご承知の通り、利益から経費を引いた「所得」に対して税金がかかりますので、より多くの経費を計上した方が得になるとのことから、それらのご質問をいただくのかと思いますが、ポイントを押さえておかないと、知らなかったがために損をしていたり、後から税務署に指摘をされて、本来払う必要のなかったペナルティーまで課せられたりと、余計に持って行かれていては意味がありません。
なので今回はそんなことにならないよう、過去に何度もフリーランスの方の税務申告や、また税務調査の現場に立ち合った経験から、実際にフリーランスの方が必要経費として計上できるものについて、その割合や経費率や基準の他、対税務署的にどういった処理をしておけば良いのかについて解説していきます。
そもそも経費とは?
先程も少しお話しましたが、毎月の無料相談会などでお話を伺っていると
「フリーランスのSEなんですが、パソコンやネット回線代は経費として計上できますか?」
や
「自宅で仕事をしているんですけど、家賃も経費として認められますか?」
など、具体的に「○○は経費として認められますか?」といったご相談を多く受けます。
ただ、結論から申しますと、税法上、「△△と××は経費として認められる」と記載があるわけではなく、フリーランス(個人事業主)の場合、所得税法の条文には
総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用
(所得税法第37条第1項より一部抜粋)
となっています。
つまり要約すると、
フリーランスとして仕事を行う上で、直接関連のある費用=経費
というわけです。ちなみにこの「直接」というのがミソで、よく税務調査でも争点になるところなのですが、これはまた後述します。
尚、これは個人事業として行われている場合で、法人の場合はまた経費の概念が異なり、法人化されることで節税対策の方法はより多くなります。
フリーランスが経費として具体的に計上できるものと割合とは?
では、具体的にどんなものが経費となるかと申しますと、その方の業種やお仕事内容にももちろんよりますが、よくある例で言うと
- パソコン代
- ソフト代
- 電気代や光熱費
- ネット通信費
- ガソリン代
- セミナーや教材など勉強代
- 仕事上の振込手数料
- 仕事に必要な交際費
などが一例としてあげられるでしょう。
但し、気を付けないといけないのは、仕事に関するセミナー代金や書籍代、また仕事に関する支払いのための振込手数料などは、そのまま全額を経費として計上できる場合が多いのですが、
専用のオフィスを借りておられる方ではなく、自宅でお仕事をされている方の場合は特に、パソコン代やアプリケーションソフト代、あと電気代や通信費、また仕事で車を使われている場合のガソリン代等、要するに日常の生活でも使用していると考えられるものについては、フリーランスの方の場合は、税務署から指摘をされる可能性が非常に高いので、100%を経費として計上するのではなく、仕事で使っている割合を計算し、按分してその分だけ計上する必要があります。
ここでのポイントとしては、まず
- 仕事用のオフィスで仕事をしているのか
- 自宅兼事務所で仕事をしているのか
この違いで、税務署から指摘を受けやすいかどうかが変わってくるということ。
次に、指摘される時には、なぜその割合で計上したのかを聞かれることが多々ありますので、その根拠を示せるかどうかがポイントになってきます。
大体ではなく、説得できるだけの客観的な根拠が必要になってきますので、考え方の基準としては
- 使用時間
- 使用頻度
- 使用距離や面積
などを基準に割合を出して按分するのが良いでしょう。
家賃は経費として認められない?
他にも問い合わせで多いのが「家賃は経費として計上できますか?」というものです。
家賃は計上できるとおっしゃっている税理士さんやサイトなどもあるようですが、通常、「税理士=税法の専門家」なので、税理士は税法の観点から判断をするものですが、実際の現場では、申告の際や税務調査などでも、非常に密接に関わってくることから、弊社では日頃から独自に、それらに関連する「法務」についても研究しており、過去の判例を見てみると、
「自宅兼事務所の家賃が必要経費として認められなかった事例」(東京地裁平成25年10月17日判決)
というのがあります。つまり、裁判で家賃は経費として認められないという判決が出ているということですね。
この内容を見てみますと、1階がリビングダイニングキッチンで、2階が洋室3部屋という間取りの自宅の内、1階をビジネス専用の集会場、2階の1室を仕事専用の部屋として使用しており、面積比率で按分し、その家賃相当額を経費として計上していたものです。
これについて裁判所は
「本件住宅について、全体として住居の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、本件住宅の一部を、居住用部分と事業用部分とに明確に区分することができる状態にないことは明らかである」
とした上で、
「リビングなどを業務専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していなかったとは考えられない」
と指摘しています。更に
「リビングなどが業務専用スペースとして使用されていたことを前提に、その面積に対する家賃を業務の遂行上必要なものとして必要経費に算入することは出来ない」
との判断がされています。
また、裁判所は自宅家賃の一部など家事関連費を必要経費として差し引くことが出来る要件として、次の2点をあげています。
- 事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であること
- その必要な部分の金額が明確に区分されていること
この二つになります。
この裁判では、他にも細かい部分についても考慮の上で判断されていますので、一概に自宅兼事務所の家賃が必要経費に計上できないというわけではなく、例えば弊社のクライアント様の場合は、日頃から税務署から指摘をされないよう対策を行っておりますので、過去にもその点で追徴されたことはありませんけれども、ご自身で申告をされる場合はこういった判例があることを知った上で、もし計上される場合は上記2点をまず充分に押さえておく必要があるでしょう。
税務署から指摘をされない正しい経費率とは?
他にも、そういった書籍を読まれたのか、過去に指摘をされたのか、中には
「所得に対して適正な経費率はどれぐらいですか?」
とおっしゃる方もおられます。要するに、どれぐらいの割合まで経費として認められるものですかという質問ですね。
概算経費率は関係ない!
過去には実際に「概算経費率」というものが業種ごとに定められていて、例えば不動産賃貸業は20%、生命保険会社の外交員は44%など、収入に対してその経費率を掛けて、申告することが可能でしたが、現在は認められていませんので、余程極端な場合は別ですが、通常は、これらの率は考える必要はなく、個別に経費を計上する必要があります。
税務署が率や割合を出して指摘してきた時の対処法は?
よく、税務調査の調査官というのは、正義のために、法律に則って、正しく調査に入るものだと思っておられる方もいらっしゃるでしょうが、中にはそういう方もおられるかも知れませんけども、一度でも調査に入られた方はお分かりかも知れませんが、税務調査官にとって、どれだけ追徴できたかは、成績となり出世に響いてきますので、中には法律にないことまで、さも正しいことのように述べ、強引に徴収しようとしてくるケースが多々あります。
イメージとしては、一般企業の営業マンが、販売成績で出世が決まるのと同じような感じです。
特に、「この税理士は税務調査に詳しくないな」と思われた場合には強く出られますし、ましてや素人に対しては強気で否認してきます。
なので、よくある常套文句として多いのが
「あなたの交際費は、他のフリーランスの方の平均と比べて多いです。なので認められません。今回は半分だけで構いませんので、修正申告して下さい」
などと言ってくることがよくあります。
そこでよく知らない事業主さんや、税務調査の本質を知らない税理士でも
「ウチは他より多いのか〜、まぁ半分は認めてくれるって言ってるし、全部認めないなんて言われたら余計に大変なので、半分だけにしておくか」
となってしまいがちですが、これは修正する必要は全くありません!
平均や割合も関係なければ、同業者より多いと認められないなんていう法律はどこにもありません。上記でお話した通り、
フリーランスとして仕事を行う上で、直接関連のある費用=経費
これが法律上、大前提なのです。
こういった税務署のデタラメを見破る方法の一つは、「言っていることに具体的な数字や根拠があるかどうかを確認すること」です。
なのでもし他の平均より高いのでダメだと言われた時には
「ではフリーランスの接待交際費の平均とは、具体的にいくらなのか教えていただけますか?」
と聞いてみるのも良いでしょう。大概は答えられないかと思いますので、その際は根拠もなく言っている可能性が高いです。
この他にも、税務署の出方や、指摘された時の対処法については以下に詳しくまとめていますので、よろしければご参照下さい。
関連記事>>>『せどりやアフィリエイトなどIT関係の税務調査の全貌を税理士が解説』
まとめ:フリーランスが計上できる経費は客観的な根拠と準備で変わってくる!
ここまでフリーランスの方が計上できる経費について解説してきましたが、これは税務調査でも非常によく突かれるところです。なので、前提としては
フリーランスとして仕事を行う上で、直接関連のある費用=経費
ですが、経費に入れるかどうかを迷われた時には、先程の所得税法の条文中にもある
- 必要性
- 事業への関連性
について、事業主の主観ではなく、社会通念に照らし合わせて客観的に判断することが重要です。
例えば上記で「仕事に必要な交際費」は経費として計上できると書きましたが、これも過去の判例(平成26年3月)を見ると、司法書士がロータリークラブの会費を必要経費としていたところ
必要経費とは、単に業務と関連があるというだけではなく、その支出が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当であり、その判断は、単に業務を行う者の主観的な動機・判断によるのではなく、当該業務の内容や、当該支出の趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行われなければならないと解される。
という判断が下されています。
要するに、理由をこじつけても認められず、売上を上げるために直接関係した費用かどうかを客観的に判断する必要があるということです。
また、お客様からのご相談を伺っていると、
「(他の)税理士さんから、税務署が認めないと言ってきているので仕方が無いと言われれ、しぶしぶ払いました」
とおっしゃる方がおられますが、もちろん、間違っている内容は修正の必要がありますけれども、税務署が認めないから仕方がないというのは、そもそもが間違っています。
それが認められるかどうか、もちろん見解を無視する必要はありませんが、本来、税務署が決めるものでは実はありません。
先程の平均の例のように、税務署は、必ずしも正しいことを言っているわけではありませんので、過去の実例で言うと、税務調査が入って、その時に就いておられた顧問税理士さんからは
「税務署が1960万円の追徴課税を言ってきていますので、納めるしかありません」
と言われて困っておられたのが、弊社に相談に来られた結果、それが60万円で済んだというケースもあります(金額の差はあれよくあることです)。
つまり、何が経費になるかではなく、どういう対処をするかで、その結果が変わってくるということです。
なので、何が経費になるかを調べる人は多いですが、実際には対処の仕方で、Aさんは○○が経費になったのに、Bさんは同じ物が認められなかったということが現実に起きるということなのです。
もちろん、一般の方が完璧な対策を行うことは難しいでしょうし、税務申告をする目的でフリーランスとして働かれている方はおられないでしょうから、そこに多くの時間を割かれるのは本末転倒ですが(その分、本業が出来ますので)、もしご自身で申告をされる場合は、万が一、税務署から指摘をされた時に対処できるよう、
- 伝票や請求書、領収書など、必要経費の根拠資料を保管しておき、どういう理由で何に使ったのかを説明できるようにしておく
- 家賃の例と同じく、銀行口座やクレジットカードなども、プライベート用と仕事用のものとを分けておく
これらを行っておくだけでも効果はあるでしょう。
ちなみに、税務調査は数年分まとめて入られることが多くありますが、指摘をされた時には忘れていることもあるかと思いますので、お勧めの方法としては、領主書などの余白の部分に「誰と、どういう理由で、何に使ったのか」を記載しておくと良いでしょう。
そういう日頃の作業をやるかどうかで、結果が変わってくることを理解しておきましょう。
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