この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
●お問い合わせは無料です。ページ下部のメールフォームよりお気軽にご相談下さい。
このブログを執筆している現在、ニュースや各所の発表等を見ていても、2020年2月頃からの新型コロナウイルスの影響で、多くの会社で欠損金が発生しています。
そもそも欠損金とは、法人税を計算する際の、所得金額(益金-損金)がマイナスの状態のことを言いますが、今後の経営のことを考えて、会社の体制を変えなければならない、休業せざるを得ないなど、以前と同じようにはいかない会社も多いことでしょう。
そんな時に、少しでも有利に動いて頂けるよう今回は、新型コロナウイルスの影響を受けられた、青色申告書を提出する法人の方には知っておいていただきたい「欠損金の繰り戻しによる還付制度の特例」について解説いたします。
そもそも「繰り戻し還付」とは?
簡単に言うと、「前年に納めた税金を、今年赤字だから返してもらえませんか?」と還付請求して、一旦納めた税金を返してもらうことができるという制度です。
ではなぜ、新型コロナで影響を受けていた場合、繰り戻し還付の話を知っておいた方が良いのでしょうか。
欠損金の繰戻しによる還付の特例について
これまでも「青色欠損金の繰り戻し還付」は可能で、それは「前期の黒字」と相殺できるというものでしたが、今回の「コロナ欠損金の繰り戻し還付」は、さらに1年前の「前々期の黒字」とも相殺できるという特例ができました。
さらに、これまで中小企業者等(資本金の額が一億円以下の法人など)が適用対象でしたが、資本金1億円超10億円以下の企業も、コロナ税特法により適用が可能になりました。
ただ決算時期や、コロナウイルスの影響を受けていない事業がある場合、対応が変わってきますので、順を追って解説していきます。
コロナ欠損金として該当するものは?
ではその「コロナ欠損金」とは、どういったものが該当するかについてですが、簡単に言うと「新型コロナウイルスの影響により発生した損失」の事を指します。
具体的にはどういった費用や損失が該当するかを考えてみますと、
- 飲食業者などの食材の廃棄損
- 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
- 施設や備品などを消毒するために支出した費用
- 感染発生の防止のために配備するマスク、消毒液、空気清浄機などの購入費用
- イベントなどの中止により廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
こういったものが挙げられるでしょう。
但しこれらはあくまでも「一例」です。必ずしも該当するとお約束するものではありませんのでご注意下さい。
どの期間の欠損金が対象で、いつ還付金が返ってくるのか?
新型コロナ税特法により、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの、この期間に終了する各事業年度において生じた欠損金が適用されます。
また、対象となる欠損金は
「災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度」、または「災害のあった日から同日以後6ヶ月を経過する日までの間に終了する中間期間」において生じた欠損金のことを指します。
この災害損失欠損金額を、その災害欠損事業年度開始の日前1年(青色申告書を提出する法人である場合は、前2年)以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税の還付を受けることが出来る制度とされています。
ただ、このままだと表現が難しく、一体いつ、どのように還付されるのかが分かりにくいかと思いますので、具体的にどういった流れになるのか、モデルケースとして、会社が3月決算で、新型コロナの影響による商品廃棄などの「災害があった日」が、令和2年の4月中だと仮定して見てみましょう。
災害のあった日から1年を経過する日までの間に終了する各事業年度とした場合
令和3年3月に終了する事業年度だと、通常は令和3年5月末までに申告し、その後還付になりますので、この流れですと、1年先の6月や7月頃にならないと還付されません。
災害のあった日から6ヶ月を経過する日までの間に終了する中間期間とした場合
令和2年4月~9月という中間期間で、令和2年11月末までに仮決算による申告をした場合、その後還付になりますので、この流れですと、早ければ年内に還付される可能性があります。
コロナ欠損金とそれ以外の欠損金がある場合
事業をされている中で、コロナウイルスの影響を受けている事業と影響を受けていない事業がある場合、コロナウイルスの影響を受けている事業に対して特例が適用されます。
例えば、青色欠損金が1,500万円発生したとします。
この1,500万円の内、1,200万円がコロナ欠損金に該当するのであれば、残りの300万円の部分は通常通り「前年の黒字部分」から還付され、コロナ欠損金の1,200万円分は「前年の黒字部分」、ここで引ききれなければ「前々年の黒字部分」からも還付される事となります。
ただし、前年、前々年に納めた税金以上には還付されません。
税務調査が入らない?
ちなみにこれは、関連する税務署内の情報ですが、実は新型コロナの影響で、税務調査の方法も変化しています。
通常還付申請は、法令上、国税当局が一般的に税務調査と言われる実地調査をした上で、法人税の還付が行われます。
つまりこれまでは、還付申請を行うと非常に高い確率で、税務調査に入られていたということですね。
ですが新型コロナウイルスの影響で、今は必ずしも実地調査に限らず、机上調査を経て還付される事が多くなると見られています。
つまり、税務調査がなくなるわけではありませんが、実地調査ですと、調査官が来るため対応が必要となり、どうしても一旦は手を止める事になってしまっていたのが、机上調査で済んでしまう可能性が高い今であれば、ビジネスの手をほとんど止めることなく、還付を受けられる可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ
今回は、コロナ欠損金の繰り戻しについて解説しました。
これは絶対にしないといけないものではありませんが、場合によっては、今後の経営方針を検討するにあたって、申請して還付を受けることで、より有利にビジネスを展開できるかと思いますので、該当される方は、ぜひ検討されることをお勧めします。
▶具体的な節税実績や、無料での会社設立、無料節税シミュレーションについて見る >>> TOPページへ
※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろんご相談頂いても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。