この記事を書いている人
税理士 堀 龍市
ネットビジネス専門会計株式会社 代表取締役
税理士(近畿税理士会所属 登録番号092469番)
有名YouTuberの他、せどりや転売・物販、アフィリエイトなど、各ネットビジネス界のパイオニアらの税務顧問を多数担当。マスコミ実績多数。
自身も業務でネットを活用することで、北は北海道から南は沖縄の離島まで多くのクライアント実績を持つ。
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日頃、毎月の無料相談会などで、皆さんからのご相談を伺っていますと、アカウントや名義に関して危ういご相談を受けることがあります。
例えばよくあるケースをご紹介すると、現在、お勤めをされながらネットビジネスをしておられる方などは、やはりお勤めの会社に対して、副業をバレないようにしたいと考えておられる方が非常に多く、そのために、皆さん様々な手段を考えておられるようです。
その中でも、私どもがよく耳にする方法の一つに
「両親や配偶者の名前を使ってネットビジネスをする(もしくは、している)」
というものがあります。
しかし、これらの行為は私ども税金のプロからすると、アカウントや銀行口座の名義について、意外と皆さん軽視されていて、リスクがあるなぁと感じることも少なくありません。
知らずにでも行っていると、後で税務署から指摘をされたり、ペナルティーの罰金を科せられる可能性もあることですので、今回は、他人名義のアカウントや口座を利用することの税務上の危険性について解説してみたいと思います。
税法の世界には「実質所得者課税の原則」というものがある?
税務の現場をご存知ない方の場合、あまりピンと来ない方もおられるかも知れませんが、まず大前提として、税法には名義よりもその収入は実際は誰のものなのかということが、原則的に重視されます。
これを「実質所得者課税の原則」と言い、所得税法、法人税法のそれぞれで次のように規定されています。
『実質所得者課税の原則』
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(所得税法第12条より)『実質所得者課税の原則』
第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(法人税法第11条より)
具体的に説明しますと、例えばサラリーマンの方が、会社に副業をしていることを知られたくなく、父親名義のアカウントや銀行口座を利用して、ネットビジネスを行っていたとしましょう。
しかし、実際にビジネスをしているのは本人だけで、父親の名義は形式上利用しているだけだったとすると、税法の原則から言えば、そのビジネスの収入は、名義人である父親ではなく、すべて実質的にビジネスをされているサラリーマンご本人のものであると言えます。
そのことから、色々と危険性が出てきますので、まずはそのことを理解しておいて下さい。
他人の名義を利用していることの具体的なリスクとは?
では、それを踏まえた上で、実際にどういったリスクが想定されるかについて、いくつかのパターンを見ていきましょう。
確定申告や納税を行っていても他人名義だと追徴課税される?
前述のように、本人(サラリーマン)が副業をしていることを会社に知られたくなく、父親名義のアカウントや銀行口座を利用してネットビジネスを行い、確定申告も父親の名前でしっかりと申告し、税金もきちんと納めていたとしましょう。
このようなケースでは、どのようなリスクが考えられるでしょうか。
ネットビジネスでの所得は総合課税と言って、他の所得と合算した上でその所得金額に応じて税率が決まります。
本人には、サラリーマンとしての給与収入が年に数百万円あり、一方で父親はすでにリタイヤして収入が少ないといった場合、本人の名前で申告をするよりも、父親の名前で申告をすることによって、税金の負担が減っているというケースは十分に想定できます。
この場合、前章で説明したとおり、本来、ネットビジネスの所得は本人の所得であると言えるため、税務調査が行われれば、当然父親の名前で申告していた利益は、全て本人の利益として申告し直し、追加で税金を納めることになり、更にはペナルティの税金まで課されてしまうこととなります。
回避できたとしても贈与とみなされる可能性がある?
また別のパターンとして、上記のケースで、ネットビジネスによる収入が、本当に父親の収入なのかということが問われなかったとしましょう。
この場合、他にリスクはないのでしょうか。
父親がネットビジネスを行っていることにしている以上、その利益は父親のものであるため、今度は儲けた利益を自分が使うためには、父親からお金を受け取らなければなりません。
場合によっては、この父親からお金を受け取る行為は贈与とみなされ、金額によっては贈与税が課税されるといったことも想定されます。
法人成り(法人化)をした後に、個人名義のアカウントを利用していた場合は?
解決策としては、会社を設立して法人名義で行うというのが最も安全な対処法でしょう。
ちなみに、法人化と聞くと大げさなことのように思われる方がいらっしゃいますが、今では資本金も1円から設立出来ますし、例えばサラリーマンの方でも司法書士に依頼をするだけで、書類を作成してもらえて自動的に設立可能です
(尚、弊社の税務サービスへお申し込みの方は、法人設立にかかる手数料などの費用は弊社が負担させて頂きます)。
ただ、一つ注意が必要なのは、会社を設立して法人として事業を行う場合、個人事業をしていた頃からのアカウンをそのまま利用しているといったケースも多く見受けられます。
(クライアント様方のお話を伺っていても、ネットビジネスの場合、法人で新たにアカウントを作成すると、個人時代の評価がなくなってしまい、売上に直結するといったことも多く、例えばアフィリエイトで個別報酬を設定されている方や、Amazon等、レビュー欄のあるASPを使われている方など、同じような方は大勢おられるかと思います)
このような場合にも、税務調査等で、個人事業の頃の名義をそのまま利用している理由を明確に説明できなければ、調査官から見て、より多く税金が取れる方の所得として、指摘をされてしまうことが十分に考えられます(調査官は法律などお構いなしに、より多く税金が取れるような指摘をしてくることが多々あります)。
ちなみに、実際の現場の話をお伝えしますと、税務署の職員(調査官)はサラリーマンと同じで、通常、自分で事業をしたことは基本的にありませんので、上記ような見識がなく、ただ単に事業をしている人(もしくは法人)と名義が違うということだけで、指摘をしてくることはよくあります。
実際、彼らも成績で出世が決まりますので、ツッコミ所があれば、なんとかして税金を取ろうとするのが調査官なのです。それらの詳細や、具体的な対応策については以下の記事にまとめていますので、宜しければあわせてご参照下さい。
関連記事>>>『せどりやアフィリエイトなどIT関係の税務調査の全貌を税理士が解説』
まとめ
やましい動機は別として、冒頭の会社員の方などの場合、社内規定等もあるでしょうから、副業を行うのに自分の名前を出したくないという気持ちは十分に理解できます。
ただ、たとえ身内であったとしても、他人の名前を使うということは、税金の面から考えると、ここまで解説したように非常にリスクのある行為なのです。
また、実際にはこのようなリスクを冒さなくても、確定申告書の書き方を注意したり、先ほど述べた法人を使ったビジネスモデルを取り入れることで、会社にバレないようにしたり、税金面でリスクなく副業を行うことは可能です。
関連記事>>>『図解!失敗しないネットビジネスの確定申告のやり方を税理士が解説』
また、会社を設立した後に、どうしても個人のアカウント等を利用しなければならない場合においても、最低限、事前にその理由を明確に説明できるよう、根拠資料等を準備しておくことが重要です(但し、それでもリスクゼロではありませんので、可能な限り法人名義のアカウント等を使用されることをお勧めします)。
名義やアカウントについて安易に考えていたために、気づかないうちにリスクを冒してしまい、余分な税金を支払うことにならないよう充分ご注意ください。
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※上記の内容は記事発行時のものです。税法は毎年変わります。現在のリアルタイムな税金対策の内容や、何かご不明な点がございましたら、お電話や以下のメールフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。また、今よりどれだけ節税できるかの目安となる「シミュレーションのサンプル資料」を無料で差し上げております(もちろんご相談頂いても、こちらから契約を迫ったり、セールスや勧誘等を行う事は一切ございませんのでどうぞご安心下さい)。