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不要品の税金

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃、「巣ごもり」という言葉が流行り、時間がなくて普段できていなかったことに手を付けられた方も多かったかと思いますが、ここぞとばかりに家の片付けやお掃除、いわゆる「断捨離」をされた方も多いでしょう。

その断捨離で出てきた不要品を、ただ捨てるのはもったいないということで、「メルカリ」や「ヤフオク」などのフリマサイトやオークションサイトに出品するかたも多く、それらの利用者は今でも年々増加しています。

特にメルカリでは2013年のサービス開始から8年半の2021年12月4日時点で、累計出品数が25億点を突破、月間の利用者数も2000万人を超えるなど、その人気は衰えるところを知らず、気がつけばたくさん売り買いしていたという方も少なくないでしょう。

ただ、売り始めた時には意識していなくても、出品したものが売れてくると気になるのが税金です。

ちなみに、以前の記事でも解説しましたが、家にある不要品(生活用動産)を売っただけでは税金はかからないという話をご存知の方は結構いらっしゃいますが、税金がかからないと思って申告せずにいたら、売っているものは生活用品でも、実は税金がかかるケースで税務署から指摘されたという方もおられます。

今回は、そんな実際にあった国税不服審判所での裁決事例と一緒に、税金がかかるかどうかの考え方の基準について解説していきたいと思います。

 

メルカリなどのフリマサイトで家具を売ったら税金かかる?

以前弊社にあったご相談で、家具を売ったけどこれって税金かかりますか?というお話がありました。

ビジネスとして売っていないのであれば、譲渡所得のルールで考えますので、家具は生活用動産(生活で通常必要な動産)に該当し、売ったお金に税金はかかりません。

しかし、よくよくお話を聞いてみると、売った内容は家具ではあるものの、頻繁に出品しており、年間の合計売上が数百万円になっているため、事業所得とみなされないか心配しているというお話でした。

結論から言いますと、この辺りは税務調査対応次第ですので実際に税金がかかるかどうかは明言できませんが、調査官から指摘を受けやすい状態だろうと考えます。

メルカリやヤフオク販売で税務署から指摘を受けやすいポイントとは?

もし「家具の買い替えを考えるタイミングはいつですか?」と聞かれたら、皆さんはどのくらいの期間をイメージされますか?

5年?10年?壊れるまでという方もおられるかもしれません。

他にも、車でいうと平均保有期間が7年程度というデータも出ていて、こちらも一般的にはそこまで頻繁に買い替えるイメージではありません。

こういったところから、実際には家で使用されている期間があったとしても、頻繁に購入して売っている家具となれば、「本当に生活用ですか?」と疑問が浮かぶのは当然でしょう。

では、元々購入頻度が高いものであれば問題ないのかと言われると、そうとも限りません。

実は、過去に下着等を売った収益だから、生活用動産に該当すると思って申告していなかったところ、実際には生活用動産には該当しないと判断されて、税金を納めなければならなくなったケースがあります。

実際に国税不服審判所で争った話

平成23年6月17日の国税不服審判所の裁決で、下着等をオークションで販売したことは、生活用動産の譲渡に当たるかどうかなどについて争った例を見ていきましょう。

※実際には他にも争っていますが、今回は「生活用動産の譲渡に当たるかどうか」の判断について言及されている部分がありますので、そこをピックアップして書かせていただきます。

審査請求人(納税者)は、焼肉店を営む個人事業主で、納税者自身の下着等をオークションで年間67回販売したが、その収入は生活用動産の譲渡に基づく収入だから課税されないと主張しました。

しかし、国税不服審判所は

その販売の回数、方法、態様及び決済代金額等にかんがみると、請求人の下着等の販売は、生活用品としての下着等の時価相当額による売買の域を超え、当該下着等の譲渡による所得は、所得税法上の生活に通常必要な動産の譲渡による所得に当たらない、「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」であるとし、生活用動産の譲渡には該当しない

引用:国税不服審判所 公表裁決事例 一部抜粋

と判断しています。

下着等という言葉だけ見ると生活用動産に該当すると考えられ、税金はかからないように思えます。

しかし、それは営利目的で販売していたものであると判断されました。

それではどうしてそのような判断になったのかもう少し詳しく見てみましょう。

メルカリやヤフオクで税金がかかるケースの法令解釈は?

この裁決では生活用動産の考え方について以下のように説明しています。

イ 法令解釈
(イ) 所得税法第9条第1項第9号は、自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得は、所得税を課さない旨規定し、これを受けて、所得税法施行令第25条は、非課税とされる生活用動産について、生活に通常必要な動産のうち、一個又は一組の価額が300,000円を超える貴金属等以外のものと規定している。

本来、生活用動産は投資ないし投機目的で所有するものではなく、通常はその購入価額以上で売却することができるものではないといった事情等により、当該生活用動産の譲渡による所得を非課税としている趣旨のものと解される。

そうすると、ある動産の譲渡による所得が非課税となるか否かは、当該動産の用途、使用状況を考慮する必要があることはもとより、当該譲渡が行われた際の状況等をも考慮する必要があると解するのが相当である。

資産の譲渡による所得が営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得に当たるか否かの判断に当たっては、資産の譲渡の客観的な態様・状況からみて、経常的・計画的に発生する所得か否かを判断するのが相当であり、具体的には資産の売買回数、数量又は金額、売買に当たっての広告、宣伝等の方法、並びに当該譲渡に係る資産の取得及び保有状況等を総合して判断することとなる。

引用:国税不服審判所 公表裁決事例 一部抜粋

つまり、下着等は生活に通常必要ではあるけれど、税金がかからないかどうかの判断は総合的に見て判断すべきだということです。

その総合的に判断する部分の一例が、売買の回数や数量、金額、宣伝広告などです。

この審査請求人の場合、販売回数は年間に67回、その金額は時価総額よりも高い、さらに宣伝や広告を行った上で販売していたとなると、家にあった不要品を売ったと言うのは無理があると言わざるを得ないでしょう。

まとめ

基本的に、家にある不要品を売っただけでは税金はかかりません。

しかし、解説させていただいたように、販売している回数や数量、金額など、内容によっては営利目的だと判断されて、それは譲渡所得ではなく、事業所得や雑所得だと判断される可能性があると言うことが、判例からもお分かりいただけたでしょう。

最近ではSNSで素敵なお部屋を紹介する方も多く、また安くて良いものも増えていますので、それらの影響を受けて模様替えする人も少なくないでしょうし、冒頭でお話したような家具も気軽にインターネットで買えてしまうため、買い替えのタイミングも昔に比べると短くなっているかもしれません。

ご自身の感覚としては営利目的ではなく、生活に必要だから買ったものを売ったお金であっても、一般的に売り買いする頻度や数量、金額などのイメージから離れれば離れるほど調査官の目に止まりやすくなります。

税金がかからないと思っていた方で、少し心当たりがあるなと思った方は、いざお尋ねがあった時にも説明がしやすいように、最低でも購入した時の領収書や写真などの情報は、出来るだけ残しておかれることをおすすめいたします。

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